放送日:2008年12月13日
第2話 孤独を癒やすチョコレート
のどかな春の日。
竹宮芽衣(南沢奈央)は、篠崎悠哉(矢崎広)が好きなのは姉の春菜(岩田さゆり)だと知った。しかし、嫌われたくない芽衣は、つい本当の気持ちとはウラハラに、悠哉の恋を応援することを約束してしまう。
ある日、西野敦史(溝端淳平)は、森崎孝道(小木茂光)とともに母の夏実(山本未來)が入院している医療センターに見舞いに行く。夏実は薬物依存症で、薬を断ち切るために入院していた。夏実はだいぶ落ち着いた様子で、早く退院したいとせがむのだが・・・。
同じ頃、高橋陸(木村了)は実家の定食屋の前で携帯電話を拾う。すぐに持ち主から電話がかかってきて、取りに来るというのだが、店にやってきたのは、ゴスロリファッション&メイクの女の子。その子は、普段は眼鏡をかけていて、とてもおとなしそうな同じクラスの中川沙良(桜庭ななみ)だった。
悠哉はいよいよ春菜に告白する決意を固めていた。芽衣は、健闘を祈ると心にもないことを言ってしまう。芽衣は、その様子を見ていた敦史から、自分の気持ちに嘘をついてまでいい子でいるのがわからないと言われてしまう。
ある放課後、芽衣は春菜に呼び出される。春菜は、芽衣が悠哉のことを好きなのだと薄々感じていた。しかし悠哉に告白され、自分自身にとっても悠哉が特別な存在であることに気付いている。姉として、芽衣が本当に悠哉を好きならば身をひく覚悟で気持ちを確認する春菜。そんな姉の思いやりを感じた芽衣は、精一杯の笑顔で悠哉のことは兄としてしか見ていないと答えてしまう。
翌日、山岸美亜(岡本玲)と中西優梨(鈴木かすみ)は、失恋をした芽衣をなぐさめようと学校を飛び出す。途中で藤原夏樹(柳下大)と神谷充(田島亮)を捕まえ、さらに敦史までも巻き込んで、駅前のハンバーガー屋に駆け込む芽衣たち。そんな友達の優しさに気持ちが晴れる芽衣。
しかし、そこには美亜に男をとられたという先輩がいた。美亜につかみかかろうとする先輩を、芽衣は果敢に遮る。
学校に戻ってきた芽衣たちを待ち構えていたのは担任教師。一斉に校舎に逃げ込む一同。そんな騒動の中、他のメンバーとはぐれ、芽衣と敦史は屋上に逃げ込む。運命を甘く見ていたと、芽衣は敦史に礼を言う。二人は、打ち解けて…。
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Monday, April 11, 2011
赤い糸 第1話
放送日:2008年12月6日 23:10~23:55放送
第1話 貴方に出会うために恋をする
のどかな春の日。
1人の女の子が、舞い降りてくる桜の花びらに手を伸ばしている。
『桜の花びらが地面につく前に3枚つかむことができたら願い事が叶う』
そんなおまじないを信じ、一生懸命花びらをつかもうとしているその少女は竹宮芽衣(南沢奈央)。そこに現れる篠崎悠哉(矢崎広)。芽衣はひとつ年上の幼なじみの悠哉に恋をしている。幼い頃から姉の春菜(岩田さゆり)と悠哉と芽衣は兄弟のように育ってきた。しかし、いつからか悠哉の存在は、ただの幼なじみのお兄ちゃんから特別な人に変わっていった。この春、春菜が高校に進学し、通学路が別々になったことで、毎朝、悠哉との2人きりの時間が増えた。そんな時間が芽衣の恋心を少しずつ膨らませていった。
鈴の森第二中学校ではクラス分けの表が張り出され、生徒たちは新しいクラスメイトとともにそれぞれの教室へと向かっている。芽衣は2年3組。大好きな友達、山岸美亜(岡本玲)と中西優梨(鈴木かすみ)と同じクラスである。そんな中始まる最初のホームルーム。芽衣の隣の席だけ、なぜか空いている。
そこに遅れてやってくる、西野敦史(溝端淳平)。芽衣の隣の席に鞄を置く敦史。その拍子に鞄の中からチョコレートの箱がポトリと落ちる。それを拾った芽衣にぎこちなく「・・・どうも」と返す敦史。
ある日、芽衣は悠哉から呼び出され、ドキドキしながら地元の神社に向かう。ところが、悠哉の話とは、芽衣の姉、春菜への想いの告白だった。さらに、悠哉は春菜への恋に協力して欲しいと芽衣に頼む。自分の気持ちを押し隠しながら、うなずいてしまう芽衣。
悠哉が去ると、敦史がやって来た。世話になっている神社の仕事をしに来たと言う敦史に、傷心の芽衣は神様への願い事が叶うのは、どんな人かと尋ねる。すると敦史は、それは神様の気まぐれで、願い事が叶う人と叶わない人に違いはないのではないかと答えた。芽衣は、敦史に礼を言って去って行く…。
第1話 貴方に出会うために恋をする
のどかな春の日。
1人の女の子が、舞い降りてくる桜の花びらに手を伸ばしている。
『桜の花びらが地面につく前に3枚つかむことができたら願い事が叶う』
そんなおまじないを信じ、一生懸命花びらをつかもうとしているその少女は竹宮芽衣(南沢奈央)。そこに現れる篠崎悠哉(矢崎広)。芽衣はひとつ年上の幼なじみの悠哉に恋をしている。幼い頃から姉の春菜(岩田さゆり)と悠哉と芽衣は兄弟のように育ってきた。しかし、いつからか悠哉の存在は、ただの幼なじみのお兄ちゃんから特別な人に変わっていった。この春、春菜が高校に進学し、通学路が別々になったことで、毎朝、悠哉との2人きりの時間が増えた。そんな時間が芽衣の恋心を少しずつ膨らませていった。
鈴の森第二中学校ではクラス分けの表が張り出され、生徒たちは新しいクラスメイトとともにそれぞれの教室へと向かっている。芽衣は2年3組。大好きな友達、山岸美亜(岡本玲)と中西優梨(鈴木かすみ)と同じクラスである。そんな中始まる最初のホームルーム。芽衣の隣の席だけ、なぜか空いている。
そこに遅れてやってくる、西野敦史(溝端淳平)。芽衣の隣の席に鞄を置く敦史。その拍子に鞄の中からチョコレートの箱がポトリと落ちる。それを拾った芽衣にぎこちなく「・・・どうも」と返す敦史。
ある日、芽衣は悠哉から呼び出され、ドキドキしながら地元の神社に向かう。ところが、悠哉の話とは、芽衣の姉、春菜への想いの告白だった。さらに、悠哉は春菜への恋に協力して欲しいと芽衣に頼む。自分の気持ちを押し隠しながら、うなずいてしまう芽衣。
悠哉が去ると、敦史がやって来た。世話になっている神社の仕事をしに来たと言う敦史に、傷心の芽衣は神様への願い事が叶うのは、どんな人かと尋ねる。すると敦史は、それは神様の気まぐれで、願い事が叶う人と叶わない人に違いはないのではないかと答えた。芽衣は、敦史に礼を言って去って行く…。
Wednesday, April 6, 2011
世界の中心で愛を叫ぶ 第12話
2004年9月17日放映
特別編「17年目の卒業」
――谷田部のナレーション
――谷田部のセリフ
――大人サクのセリフ
回想シーン
谷田部(松下由樹)のナレーションで物語が始まる。
1987年、一人の少年と一人の少女がいました。
少年の名は、松本朔太郎。
少女の名は、廣瀬亜紀。
ごくありふれた二人の恋。
けれどそこに待ち受けていたのは、ある悲劇的な結末。
そして少年はいまだ彼女の死から、卒業していない――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
2004年。
高校のグラウンドで、サクが走りながらアキの散骨を終える。
短距離走のゴール地点付近で、息を切らすサク(緒形直人)。
後ろから谷田部が声をかける。
変なおじさんが走ってるって言われたんだけど。
何してるの?
サクが天を指差す。
アキを送ってたんです。
そっかぁ…
はい。
廣瀬亜紀の骨と過ごした17年。
その死を痛み続けた17年。
ひとつの恋を卒業するのに、17年という月日は
長かったのだろうか、短かったのだろうか。
1987年、今日のように二人はここにいた。
これは、松本朔太郎と廣瀬亜紀という、私が送り出せなかった二人の生徒の物語――。
1話:教師の葬儀。
学年を代表して弔辞を読み始める亜紀。
きっかけは、突然降り出した雨。
突然強い雨が降り始める。
それにも負けず弔辞を読む亜紀に、そっと傘を差しかけるサク。
廣瀬はちょっと意地っ張りな優等生。
松本は、忘れ物ばかりするのん気者。
正反対の二人が、お互いを意識し始めたのは
アジサイの花が咲く、初夏の頃でした。
「松本くん、サクって呼んでもいい?」
「好きよ、サクちゃん。大好きだよ」
それは一見、どこにでもあるような普通の恋。
たぶん、初恋…。
2話:学級委員に強引にキスされる亜紀。
それを目撃したサクは怒り、学級委員に飛びかかる。
時おり、どうでもいいようなことが原因でケンカをしたり。
飾らない二人の姿は私にとって、微笑ましくもあり、ちょっと羨ましく思えるものでした。
松本のお祖父さんが亡くなったのは、そんな時でした。
3話:自転車から転げ落ちたサクを、抱きしめる亜紀。
「私太るよ。お祖父ちゃんと同じぐらいになって、後ろに乗るよ」
その死を受け入れられない松本を支え、励ましたのは廣瀬。
一方松本も、不器用ながら必死に廣瀬を支えようとしていました。
4話:目前に迫った陸上の県予選。
練習に明け暮れる亜紀を応援するサク。
けれど廣瀬の身体に異変が起き始めたのも、この頃。
そして廣瀬にとって、高校生活最後のレース。
レース開始に間に合わなかった亜紀。
「なんでダメなんですか? お願いします。これが最後になるかもしれないんです。お願いします…」
二人だけの競技会。二人だけの公式記録。
走り続ける廣瀬と、それを見守る松本。
二人だけの最後のレース。亜紀の自己ベスト、12秒91を記録。
二人はずっとこんな風に、手を取り合い、歩いていくものだと思っていました。
でも――
二人で迎える初めての夏休み。
無人島へ、二人きりの旅行へ行ったようでした。
ところが皮肉なことに、この旅行が若すぎる二人の悲劇の始まりとなったのです。
6話:夢島で倒れた亜紀。意識を失い救急車で運ばれる。
連れ出したサクは真から殴られる。
私にその知らせが届いたのは、新学期が始まる1週間前のこと。
廣瀬の病名は、白血病でした。
新学期が始まり、「どこの病院ですか?」と谷田部に聞くサク。
「ご家族の希望でそれはお知らせできませんが、廣瀬本人が、すぐに戻ってくるから大丈夫ですって言ってました」と谷田部。
とっさの嘘でした。
サクと亜紀の両親の会話。
「亜紀ちゃんに会わせてください。俺できること何でもしますから」
「できることなんて簡単に言わないで!」
「白血病なんだ…君に何ができるんだ?」
このまま続くと思っていた幸せは、突然音を立てて崩れ、松本は自分を責め始めました。
気丈な廣瀬もまた、不安を隠せないようになっていました。
そんな二人に私が言えることは…
「学校ぐらい出なさいよ」
「ここでグチグチ泣くことぐらいかもね、あなたにできることは」
「廣瀬の前でもそうしてるつもり?」
1987年当時、急性白血病は不治の病と考えられており、
本当のところ、私自身も何をすべきか明確な答えを持てないでいました。
けれどそんな私を置き去りにするように、仲間の力を借りて、松本は廣瀬を支えていったのです。
サクが企画した「どすこいロミオとジュリエット」を、亜紀の病室で演じる大木・ボウズ・智世。
亜紀の父の許可が出て、1ヶ月ぶりに再会した二人。
「サクちゃんって呼んで」「サクちゃん」
「もう一回…」「サク…サクちゃん…サクちゃん…」
二人は生きているという事実を、そして再会の喜びを、
お互いのぬくもりを感じ合うことで、確かめ合っていったようです。
でも――
7話:「私、白血病なんだって」
サクを騙して、自分の病名を知った亜紀。
そしてそんな時――
1日だけ外泊許可が出て、久しぶりに登校する亜紀。
廣瀬が、学校に戻ってきたのです。
「午後からサボらない? 頼むから、俺の前で無理しないでよ」
たった1日の外泊許可。
午後の授業をサボった二人がどのように過ごしたのか、私は知りません。
でもその裏側で、廣瀬は迫り来る死の恐怖に、押し潰されそうになっていたのです。
同じ白血病の真島の死を知り、悲観的になった亜紀は夜の海へと入水。
「どうせ死ぬんだったら、なんで辛い治療を受けなきゃいけないの?」
「俺は廣瀬亜紀を信じる。だから絶対裏切るなよ!」
白血病という名の、絶望。
それを救ったのは松本でした。
二人はまだ希望を捨てようとはしませんでした。
8話:抗がん剤の副作用で、亜紀の髪が抜け始める。
しかし病魔は確実に廣瀬の身体を蝕み、廣瀬はオーストラリアへの修学旅行を諦めました。
自分の無力さを痛感した松本は、自分に苛立ち、動揺を隠しきれず――
「今日死ぬかもしれないんだよ! 白血病なんだよ」
大木たちにやるせない怒りをぶつけるサク。
廣瀬の回復を、必死で信じようとしていた松本。
そして出会ったウルルの空。
1枚だけ撮った写真は、きっと廣瀬に見せるつもりだったのでしょう。
けれど――
廣瀬もまた、松本を想うがゆえに別れを決意しました。
「もう来ないでください。さようなら、サクちゃん」
別れを告げる亜紀のテープ。
「先生、俺、亜紀に何かできることって…」
「わからないな。廣瀬が松本に求めてるものなんて、あなたたちにしか」
本心でした。
「じゃあ、結婚して。ここに名前書いて。俺を幸せにして…」
サクは亜紀にプロポーズ。そしてビニール越しにキスを…。
形だけの結婚。
それでも廣瀬に、不器用な愛情を表現した松本。
廣瀬はその優しさに応えようと、そして松本と生きた証を残そうとしたのです。
9話:写真館で結婚写真を撮影。ウェディング姿の亜紀。幸せそうな二人…。
本当にきれいな二人でした。
病室から見えなかった空に、微笑んだ廣瀬。
久しぶりに見せた笑顔。
この日をきっかけに、松本は空の写真を撮り続けたのでした。
でも、燃えるような夕焼けの日、廣瀬亜紀の容態が急変しました。
「お母さん、手握って。このまま目、覚めなくなる気がする」
私が二人のためにできることは、テープを渡すくらいしか、ありませんでした。
「やっとアボリジニの本、読み終えました」
「アボリジニの世界では、この世にあるすべてのものに、理由が存在するの」
「私の病気にも、理由があるはずよ」
廣瀬はもう、自分が死ぬことから目を背けられなくなっていたようです。
「サクちゃん、生きてるってどういうことかな。死ぬってどういうことかな…。
たまに、生きてるのか死んでるのか、わからなくなる」
髪が抜け落ち、スキンヘッドになった亜紀。
「キスでもしませんか?」 ビニール越しのキス…
「世界で一番青い空が見たい」 亜紀の最後の願い。
10話:「私、何のために死ぬんでしょうか?」 谷田部に聞く亜紀。
「それは残された人、一人一人が決めることなんじゃないかな。その生き様を見て」
「廣瀬亜紀は、どんな風に生きてきた?」
亜紀を連れ出すべきか迷うサクは、谷田部に相談。
「亜紀を大切に思ってる人は、いっぱいいるわけで」
「迷うくらいなら、やめといた方がいいと思うよ」とサクに諭す谷田部。
本音を言えば、私は二人でウルルに行けばいいと思っていました。
だけど、もう一度松本に考えて欲しかった。
もしかしたらこの事が、松本に大きな傷跡を残すかもしれなかったから。
空港への電車内。
「待ってたの。私はずっとサクのいない世界で、サクが生まれるのを待ってたのよ」
空港で亜紀が倒れ、どうすることもできず抱きかかえるサク。
「サクちゃん、やっぱりあの世なんてない。天国なんてない。ここ、天国だもん…」
「助けてください…助けてください…」
最終話:「ウルルに撒いて…サクちゃん…」
アキ夭折。
廣瀬の最後は、笑顔でした。
残されたテープを大木らに手渡す母・綾子。
谷田部にもテープが残されていた。
「いつでも誰に対しても変わらない先生の強さと優しさが、こうでありたいと願う私の理想でした」
私は強くも優しくもなかった。
本当に強かったのは、廣瀬亜紀でした。
廣瀬亜紀に出会えて私は幸せでした。
そして、残された松本は…。
亜紀の両親とウルルに行くが、遺骨を撒くことができず、サク絶叫。
「温度のない、重さもない、吹けば飛ぶような白い粉。それが亜紀だった」
「僕の好きな人だった――」
谷田部との会話。
「ちゃんと送ってあげられた? 廣瀬…」
「これが亜紀なんだって思うとやっぱりできなくて。でも、ずっと持ってようかなって」
「俺、医者になろうかなって」
それからの松本は、二度と廣瀬のことを口にしませんでした。
私に本心を語ることもなくなりました。
亜紀のいない世界。
医師を目指し、ひたすら勉強に打ち込むサク…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1989年3月。
あれから1年以上が経ち、高校三年生になったサクや大木らの卒業式が行われていた。
谷田部が名前を呼び、卒業証書が配られていく。
大木龍之介、中川顕良…
そして「松本…」と言いかけたところで、サクが欠席していることに気づく。
サクを飛ばして、次の生徒の名前を呼ぶ谷田部。
そこに、松本の姿はありませんでした。
一人の教師として、私は彼をここに連れてくることができませんでした。
その頃サクは、亜紀のいない卒業式に耐えられないのか出席せず、駅から旅立とうとしていた。
谷田部のクラスの卒業証書がすべて配られ終わった。
次のクラスの配布に移る前に、谷田部が願いを申し出る。
すいません、最後にもう一人、名前を呼ばせてください。
「廣瀬亜紀」
亜紀の遺影を持った智世が、遺影を抱えたまま代理として壇上へ――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
2004年。
グラウンドで亜紀の骨を撒き終えた後だろうか。
サクと谷田部が夜の学校を散策している。
取り壊される予定の校舎を前にして、サクが話し出す。
ここも変わるんですね。
校舎は校舎だよ。みんなが出て行くとこ。
何百人も見送ってるとね、時々、廣瀬ってほんとに死んだのかなって思うんだ。
ただ、卒業しただけじゃないかって…。
そう話しながら校門から出たところで、谷田部が突然大きな声を出す。
松本朔太郎!
卒業証書。
と言って、筒に入った卒業証書を手渡す谷田部。
これ、ずっと…。
はぁー、スッキリした。
と言い、満足そうな谷田部。
17年間待っていてくれた谷田部に、サクは感謝し頭を下げる。
帰り道。
「じゃあここで」と言い残し立ち去る谷田部に、サクが後ろから肩を叩く。
振り返った谷田部の頬に、サクの指が当たる。
なぁに?
家まで送りますよ。
いいよ、さっさと帰りなさい。
…はい。
それじゃ、先生。
じゃあね。
自転車に乗って走り去るサクを、暖かく見守る谷田部。
きっとこれからも、廣瀬は松本の中で生き続けるでしょう。
今度は、暖かな思い出として。
その人生が、終わる時まで――
谷田部が夜空を見上げると、星が光っていた。
それは亜紀のようでもあった。
特別編「17年目の卒業」
――谷田部のナレーション
――谷田部のセリフ
――大人サクのセリフ
回想シーン
谷田部(松下由樹)のナレーションで物語が始まる。
1987年、一人の少年と一人の少女がいました。
少年の名は、松本朔太郎。
少女の名は、廣瀬亜紀。
ごくありふれた二人の恋。
けれどそこに待ち受けていたのは、ある悲劇的な結末。
そして少年はいまだ彼女の死から、卒業していない――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
2004年。
高校のグラウンドで、サクが走りながらアキの散骨を終える。
短距離走のゴール地点付近で、息を切らすサク(緒形直人)。
後ろから谷田部が声をかける。
変なおじさんが走ってるって言われたんだけど。
何してるの?
サクが天を指差す。
アキを送ってたんです。
そっかぁ…
はい。
廣瀬亜紀の骨と過ごした17年。
その死を痛み続けた17年。
ひとつの恋を卒業するのに、17年という月日は
長かったのだろうか、短かったのだろうか。
1987年、今日のように二人はここにいた。
これは、松本朔太郎と廣瀬亜紀という、私が送り出せなかった二人の生徒の物語――。
1話:教師の葬儀。
学年を代表して弔辞を読み始める亜紀。
きっかけは、突然降り出した雨。
突然強い雨が降り始める。
それにも負けず弔辞を読む亜紀に、そっと傘を差しかけるサク。
廣瀬はちょっと意地っ張りな優等生。
松本は、忘れ物ばかりするのん気者。
正反対の二人が、お互いを意識し始めたのは
アジサイの花が咲く、初夏の頃でした。
「松本くん、サクって呼んでもいい?」
「好きよ、サクちゃん。大好きだよ」
それは一見、どこにでもあるような普通の恋。
たぶん、初恋…。
2話:学級委員に強引にキスされる亜紀。
それを目撃したサクは怒り、学級委員に飛びかかる。
時おり、どうでもいいようなことが原因でケンカをしたり。
飾らない二人の姿は私にとって、微笑ましくもあり、ちょっと羨ましく思えるものでした。
松本のお祖父さんが亡くなったのは、そんな時でした。
3話:自転車から転げ落ちたサクを、抱きしめる亜紀。
「私太るよ。お祖父ちゃんと同じぐらいになって、後ろに乗るよ」
その死を受け入れられない松本を支え、励ましたのは廣瀬。
一方松本も、不器用ながら必死に廣瀬を支えようとしていました。
4話:目前に迫った陸上の県予選。
練習に明け暮れる亜紀を応援するサク。
けれど廣瀬の身体に異変が起き始めたのも、この頃。
そして廣瀬にとって、高校生活最後のレース。
レース開始に間に合わなかった亜紀。
「なんでダメなんですか? お願いします。これが最後になるかもしれないんです。お願いします…」
二人だけの競技会。二人だけの公式記録。
走り続ける廣瀬と、それを見守る松本。
二人だけの最後のレース。亜紀の自己ベスト、12秒91を記録。
二人はずっとこんな風に、手を取り合い、歩いていくものだと思っていました。
でも――
二人で迎える初めての夏休み。
無人島へ、二人きりの旅行へ行ったようでした。
ところが皮肉なことに、この旅行が若すぎる二人の悲劇の始まりとなったのです。
6話:夢島で倒れた亜紀。意識を失い救急車で運ばれる。
連れ出したサクは真から殴られる。
私にその知らせが届いたのは、新学期が始まる1週間前のこと。
廣瀬の病名は、白血病でした。
新学期が始まり、「どこの病院ですか?」と谷田部に聞くサク。
「ご家族の希望でそれはお知らせできませんが、廣瀬本人が、すぐに戻ってくるから大丈夫ですって言ってました」と谷田部。
とっさの嘘でした。
サクと亜紀の両親の会話。
「亜紀ちゃんに会わせてください。俺できること何でもしますから」
「できることなんて簡単に言わないで!」
「白血病なんだ…君に何ができるんだ?」
このまま続くと思っていた幸せは、突然音を立てて崩れ、松本は自分を責め始めました。
気丈な廣瀬もまた、不安を隠せないようになっていました。
そんな二人に私が言えることは…
「学校ぐらい出なさいよ」
「ここでグチグチ泣くことぐらいかもね、あなたにできることは」
「廣瀬の前でもそうしてるつもり?」
1987年当時、急性白血病は不治の病と考えられており、
本当のところ、私自身も何をすべきか明確な答えを持てないでいました。
けれどそんな私を置き去りにするように、仲間の力を借りて、松本は廣瀬を支えていったのです。
サクが企画した「どすこいロミオとジュリエット」を、亜紀の病室で演じる大木・ボウズ・智世。
亜紀の父の許可が出て、1ヶ月ぶりに再会した二人。
「サクちゃんって呼んで」「サクちゃん」
「もう一回…」「サク…サクちゃん…サクちゃん…」
二人は生きているという事実を、そして再会の喜びを、
お互いのぬくもりを感じ合うことで、確かめ合っていったようです。
でも――
7話:「私、白血病なんだって」
サクを騙して、自分の病名を知った亜紀。
そしてそんな時――
1日だけ外泊許可が出て、久しぶりに登校する亜紀。
廣瀬が、学校に戻ってきたのです。
「午後からサボらない? 頼むから、俺の前で無理しないでよ」
たった1日の外泊許可。
午後の授業をサボった二人がどのように過ごしたのか、私は知りません。
でもその裏側で、廣瀬は迫り来る死の恐怖に、押し潰されそうになっていたのです。
同じ白血病の真島の死を知り、悲観的になった亜紀は夜の海へと入水。
「どうせ死ぬんだったら、なんで辛い治療を受けなきゃいけないの?」
「俺は廣瀬亜紀を信じる。だから絶対裏切るなよ!」
白血病という名の、絶望。
それを救ったのは松本でした。
二人はまだ希望を捨てようとはしませんでした。
8話:抗がん剤の副作用で、亜紀の髪が抜け始める。
しかし病魔は確実に廣瀬の身体を蝕み、廣瀬はオーストラリアへの修学旅行を諦めました。
自分の無力さを痛感した松本は、自分に苛立ち、動揺を隠しきれず――
「今日死ぬかもしれないんだよ! 白血病なんだよ」
大木たちにやるせない怒りをぶつけるサク。
廣瀬の回復を、必死で信じようとしていた松本。
そして出会ったウルルの空。
1枚だけ撮った写真は、きっと廣瀬に見せるつもりだったのでしょう。
けれど――
廣瀬もまた、松本を想うがゆえに別れを決意しました。
「もう来ないでください。さようなら、サクちゃん」
別れを告げる亜紀のテープ。
「先生、俺、亜紀に何かできることって…」
「わからないな。廣瀬が松本に求めてるものなんて、あなたたちにしか」
本心でした。
「じゃあ、結婚して。ここに名前書いて。俺を幸せにして…」
サクは亜紀にプロポーズ。そしてビニール越しにキスを…。
形だけの結婚。
それでも廣瀬に、不器用な愛情を表現した松本。
廣瀬はその優しさに応えようと、そして松本と生きた証を残そうとしたのです。
9話:写真館で結婚写真を撮影。ウェディング姿の亜紀。幸せそうな二人…。
本当にきれいな二人でした。
病室から見えなかった空に、微笑んだ廣瀬。
久しぶりに見せた笑顔。
この日をきっかけに、松本は空の写真を撮り続けたのでした。
でも、燃えるような夕焼けの日、廣瀬亜紀の容態が急変しました。
「お母さん、手握って。このまま目、覚めなくなる気がする」
私が二人のためにできることは、テープを渡すくらいしか、ありませんでした。
「やっとアボリジニの本、読み終えました」
「アボリジニの世界では、この世にあるすべてのものに、理由が存在するの」
「私の病気にも、理由があるはずよ」
廣瀬はもう、自分が死ぬことから目を背けられなくなっていたようです。
「サクちゃん、生きてるってどういうことかな。死ぬってどういうことかな…。
たまに、生きてるのか死んでるのか、わからなくなる」
髪が抜け落ち、スキンヘッドになった亜紀。
「キスでもしませんか?」 ビニール越しのキス…
「世界で一番青い空が見たい」 亜紀の最後の願い。
10話:「私、何のために死ぬんでしょうか?」 谷田部に聞く亜紀。
「それは残された人、一人一人が決めることなんじゃないかな。その生き様を見て」
「廣瀬亜紀は、どんな風に生きてきた?」
亜紀を連れ出すべきか迷うサクは、谷田部に相談。
「亜紀を大切に思ってる人は、いっぱいいるわけで」
「迷うくらいなら、やめといた方がいいと思うよ」とサクに諭す谷田部。
本音を言えば、私は二人でウルルに行けばいいと思っていました。
だけど、もう一度松本に考えて欲しかった。
もしかしたらこの事が、松本に大きな傷跡を残すかもしれなかったから。
空港への電車内。
「待ってたの。私はずっとサクのいない世界で、サクが生まれるのを待ってたのよ」
空港で亜紀が倒れ、どうすることもできず抱きかかえるサク。
「サクちゃん、やっぱりあの世なんてない。天国なんてない。ここ、天国だもん…」
「助けてください…助けてください…」
最終話:「ウルルに撒いて…サクちゃん…」
アキ夭折。
廣瀬の最後は、笑顔でした。
残されたテープを大木らに手渡す母・綾子。
谷田部にもテープが残されていた。
「いつでも誰に対しても変わらない先生の強さと優しさが、こうでありたいと願う私の理想でした」
私は強くも優しくもなかった。
本当に強かったのは、廣瀬亜紀でした。
廣瀬亜紀に出会えて私は幸せでした。
そして、残された松本は…。
亜紀の両親とウルルに行くが、遺骨を撒くことができず、サク絶叫。
「温度のない、重さもない、吹けば飛ぶような白い粉。それが亜紀だった」
「僕の好きな人だった――」
谷田部との会話。
「ちゃんと送ってあげられた? 廣瀬…」
「これが亜紀なんだって思うとやっぱりできなくて。でも、ずっと持ってようかなって」
「俺、医者になろうかなって」
それからの松本は、二度と廣瀬のことを口にしませんでした。
私に本心を語ることもなくなりました。
亜紀のいない世界。
医師を目指し、ひたすら勉強に打ち込むサク…。
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1989年3月。
あれから1年以上が経ち、高校三年生になったサクや大木らの卒業式が行われていた。
谷田部が名前を呼び、卒業証書が配られていく。
大木龍之介、中川顕良…
そして「松本…」と言いかけたところで、サクが欠席していることに気づく。
サクを飛ばして、次の生徒の名前を呼ぶ谷田部。
そこに、松本の姿はありませんでした。
一人の教師として、私は彼をここに連れてくることができませんでした。
その頃サクは、亜紀のいない卒業式に耐えられないのか出席せず、駅から旅立とうとしていた。
谷田部のクラスの卒業証書がすべて配られ終わった。
次のクラスの配布に移る前に、谷田部が願いを申し出る。
すいません、最後にもう一人、名前を呼ばせてください。
「廣瀬亜紀」
亜紀の遺影を持った智世が、遺影を抱えたまま代理として壇上へ――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
2004年。
グラウンドで亜紀の骨を撒き終えた後だろうか。
サクと谷田部が夜の学校を散策している。
取り壊される予定の校舎を前にして、サクが話し出す。
ここも変わるんですね。
校舎は校舎だよ。みんなが出て行くとこ。
何百人も見送ってるとね、時々、廣瀬ってほんとに死んだのかなって思うんだ。
ただ、卒業しただけじゃないかって…。
そう話しながら校門から出たところで、谷田部が突然大きな声を出す。
松本朔太郎!
卒業証書。
と言って、筒に入った卒業証書を手渡す谷田部。
これ、ずっと…。
はぁー、スッキリした。
と言い、満足そうな谷田部。
17年間待っていてくれた谷田部に、サクは感謝し頭を下げる。
帰り道。
「じゃあここで」と言い残し立ち去る谷田部に、サクが後ろから肩を叩く。
振り返った谷田部の頬に、サクの指が当たる。
なぁに?
家まで送りますよ。
いいよ、さっさと帰りなさい。
…はい。
それじゃ、先生。
じゃあね。
自転車に乗って走り去るサクを、暖かく見守る谷田部。
きっとこれからも、廣瀬は松本の中で生き続けるでしょう。
今度は、暖かな思い出として。
その人生が、終わる時まで――
谷田部が夜空を見上げると、星が光っていた。
それは亜紀のようでもあった。
世界の中心で愛を叫ぶ 第11話
2004年9月10日放映
最終話「かたちあるもの」
2004年。
一樹を助けようとしてバイクにひかれ、緊急手術を受けた明希(桜井幸子)。
なんとか一命を取り留め、ベッドに横たわる明希に対し、サク(緒形直人)が声をかける。
ほんとにもう頼むよ、明希…
サクは「小林」ではなくはじめて「明希」と呼ぶ。
そして今ではアキ(亜紀)よりも、明希への想いが勝っていることを実感していた。
生きている者への想いは、死者への想いに勝っていくという、
その残酷な事実に、返せる言葉が僕にはもうない。
アキの死と過ごした17年が、終わっていく気がした。
きっと流れる血は、いつしか君の記憶さえ彼方へと運ぶのだろう。
僕はあと何度、君の名を呼ぶんだろう。
あと何度、あんな朝を迎えることができるのだろう。
与えられた未来と失われる過去の狭間で、君の名を呼ぶ。
アキ――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1987年。
病院から抜け出しウルルの空を目指した二人だが、アキ(綾瀬はるか)は空港に着いたところで倒れてしまう。
だがサク(山田孝之)は引き返そうともせず、「約束を叶える」と取り憑かれたように言いながら、もう意識のないアキを背負って搭乗ゲートへ。
しかしすぐに係員に止められ、重体のアキは病院へと運ばれる。
その時アキのバッグと共に、包装紙に包まれた本のようなものが置き去りにされていた。
入院先へと連れ戻されたアキ。
病室前の廊下にいたサクは放心状態だった。
潤一郎が病院に駆けつけていた。
アキは…?
(潤一郎) まだ大丈夫だ。
そっか…。
と言ったところで、サクは極度の疲労から倒れてしまう…。
サクが倒れている間に、アキの最期の時は近づいていた。
母・綾子(手塚理美)は愛しそうにアキの手を握り、真は悔しそうにアキを見つめる。
もうなすすべはなかった。
アキは最後の声を振り絞る。
そ…ら…
ウルルに…撒いて…
わたし…
サ…ク…ちゃん……
長い夜が過ぎ、そして明けようとしていた。
サクは病院のベッドの上で目を覚ました。
看病していた母・富子に声をかける。
アキは?
(富子) 今朝ね…
何があったかを直感したサクは、点滴針を強引に引き抜いて起き上がる。
そして一直線にアキの病室へ。
だがすでにベッドは空だった。
やるせなさに襲われたサクは、思わず近くにあったマットレスや椅子を投げ飛ばす。
サクを追いかけてきた富子が慰める。
サク! やめなって。
安らかな最期だったって。
笑ってたって。
幸せそうだったって…
嘘だろ…
最後に、あんたの名前呼んだって…
嘘だ…こんなの、全部嘘だって言えよ!
その事実を認められないサクは、泣き崩れるしかなかった…。
後日。
退院したサクは家へと帰るが、心を閉ざし、両親とも言葉を交わさない。
一人で部屋に閉じこもるサク。
目を閉じると、アキがいた。
このまま、目が覚めなければいいと思った。
翌朝。
アキの葬儀がしめやかに執り行われていた。
担任の谷田部(松下由樹)をはじめとして、大木・智世・ボウズらも出席。
皆、目には涙を浮かべていた。
谷田部はサクを探すが見当たらない。
父・潤一郎に連れられ、気乗りしないまま葬儀場を訪れたサク。
だが入り口を前にしてたところで、やはりアキの死を受け入れることができず、走り去ってしまう。
一方、大木・智世・ボウズは、棺に収められたアキに献花し、最後のお別れをする。
ボウズはプレゼントするつもりで買った帽子を、
大木はブルーハーツのカセットテープを、
智世は陸上用のシューズを、
谷田部は陸上部で使っていたホイッスルを、それぞれ棺に添える。
「頑張ったね…廣瀬」と、谷田部はアキを慰めるように声をかける。
一方サクは雨が降りしきる中、防波堤へと向けて走っていた。
ただ、無我夢中で走ることしかできなかった。
途中で転んでしまい、すりむいた頬から赤い血が流れる。
心は死んでいても、自分は生きていることを実感する。
「なんで俺、生きてんだよ…」と嘆き、道路にあおむけになり、雨に打たれ続けるサク。
葬儀場。
最後に両親が献花をする。
綾子は「アキ!アキ…!」と嗚咽しながら、棺の中のアキに別れを告げる。
火葬場。
アキが灰になっていくのを寂しそうに見つめる大木たち。
そんな彼らに綾子が近づき、アキの遺品を手渡す。
ウルル出発前に録音されたカセットテープだった。
それぞれが一人になり、アキの最後のテープを聞く…
智世はかつて一緒に練習した、高校のグラウンドで…
智世へ。
智世とはじめてしゃべった日、今でも覚えてるよ。
陸上部の、練習の初日。
”タオル貸して”
屈託のない智世の明るさは、私の憧れだったんだよ。
智世の笑った顔、好き。
大きな声も好き。
だから…いつまでも、変わらないでね。
ボウズは悲しみを紛らわすように、たこ焼きを食べながら…
ボウズ。
一回、呼んでみたかったんだ。
怒るかもしれないけど、お坊さん、向いてると思うよ。
ボウズの明るいお経、いいなぁ。
聞いてみたいよ。
わらわは、バッチリ聞いておるぞよ。
大木は防波堤で、寂しそうに海を見つめながら…
大木くん、夢島、ありがとう。
私と大木くんは、ちょっと似てるかなって思ってます。
カッコつけなところとか。
実は、小心者のところとか。
もっと色んなこと話したかった。
もっと友達になれたよね、おまえさん。
サクちゃんを、よろしく。
谷田部は教室で、アキの席に座りながら…
先生、最後まで、ありがとうございました。
いつでも誰に対しても変わらない、先生の強さと優しさが、
こうでありたいと願う、私の理想でした。
恩師と呼べる人に出会えた私は、幸せでした。
それぞれが、アキの最後のメッセージに涙を流す…。
だが最後まで一緒にいるつもりだったアキは、サクへのテープは残していなかった。
真と綾子がアキの部屋で、遺品の整理をしていた。
するとアキのバッグと共に、包装紙に包まれた物体を見つける。
アキが病院に運ばれた時に、空港職員が見つけて確保されていたものだった。
真が包装紙を取ると、「ソラノウタ」という手作りの絵本だった。
サクの誕生日プレゼントのために、アキが病室で作ったのだ。
表紙はウルルの空だった。
真と綾子はアキの最後の願いを叶えるために、ウルルでの散骨を計画する。
一方、サクは今までのアキのテープの山と、夢島までの写真を前に、放心の日々だった。
心配したボウズがサクを呼び出し、大木・智世と共に防波堤に集まる。
(智世) アキ、サクには元気でいて欲しいって、思ってると思うんだ。
(大木) 気持ちわかるけどさ、焼香だけでもしに行こうよ。
アキちゃん、おまえさんに…
誰が言ったの。
誰かアキに会ったの。
(ボウズ) 会えるわけないだろ…
会えるわけないだろ!
おまえが一番よく知ってんだろ!
最後まで一緒にいた、おまえが! おまえが…!
寝てると会えるんだ、アキに。
夢見てる時は、これは夢だって思わないじゃん。
そのうち、目覚めなくなったりしてさ。
サクのすねた態度に、大木はたまらず殴りつける。
殴られ、倒れこむサク。
痛ぇだろ?
腹減るだろ? 寝るだろ? 起きるだろ? クソすんだろ? なぁ…。
廣瀬が一番欲しかったものは、おまえさんが持ってんだよ!
おい! おい…!
そう呼びかけるが、サクは心を閉ざしたままだった。
その夜。
アキの両親は散骨をするためにウルル行きを決める。
サクにも一緒に来て欲しいと、航空券がサクの家に届けられる。
(富子) アキちゃんの遺言でね、ウルルに、骨を撒いて欲しいって。
おまえも一緒にって、言ってくださってるんだよ。
もういい…
(潤一郎) 何を今さら傷ついたフリしてるんだ。
おまえが止め刺したようなもんじゃねぇか。
わかってたんだろ。あぁ、もう死ぬわって。
わかってて連れ出したんだろ。
やりたい放題やって、自分が一番かわいそうか?
悲劇のヒーローは、大威張りだな。
僕の気持ちなんか…
ほら、アキさんのためじゃなくて、自分のために泣いてるだけじゃないか。
サクはたまらず潤一郎に飛びかかる。取っ組み合いになる二人。
どうして送ってやることひとつできない?
どうして死んだ人間の頼みひとつ、聞いてやれないんだ!
情けねえなぁ…
その夜。
大木や潤一郎に叱咤され、サクの中で何かが変わろうとしていた。
サクは「世界で一番青い空が見たい」という、アキの最後の願いが録音されたテープを聞く。そして、ウルル行きを決意…。
オーストラリア。ウルル。
赤い大地に降り立ったサク・真・綾子の三人。
真はアボリジニの特殊な埋葬について語り始める。
アボリジニは、遺体を二回埋葬するらしい。
最初は土に埋葬して、その後で骨だけを取り出して。
その骨のすべてを木の皮にくるむ。
肉も骨もすべて、大地に戻すためらしい。
大地に戻った人間は、新たな命を育む。
アボリジニにとって、生と死は一体なんだ。
そう語り合いながら、世界の中心に辿り着いた三人。
これはアキの願いなんだ。一緒にやろう。サク君も。
木箱に入った遺骨を取り出し、三人で分ける。
手のひらには粉になった遺骨があった。
そして真と綾子の手から、風に乗って遺骨が放たれる。
赤い大地へと旅立ったアキ…。
花を…咲かせるかしら。
土に還って…
あの子は…命を捨てて……
感極まって嗚咽する綾子。
真がそれを支える。
まだ撒くことができないサクに配慮し、「下で待ってる」と言い残して立ち去る二人。
なぜだか、世界が色を失っていた。
あんなに青かった空も、赤かった土も。
そんな世界の中で、きっと骨だけは白く、変わらない真実だった。
アキとの幸せな日々を、サクは改めて回想する。
そして今、手の中にはそのアキが…。
温度のない、重さもない、吹けば飛ぶような白い粉。
それがアキだった…
サクの哀しみは頂点に達する。
「アキーーッ!」と、ウルルの空に絶叫…。
僕の、好きな人だった――
帰国後。
結局、サクは撒くことができなかった。
アキの骨は小瓶に入れ、持ち歩くことにした。
だが今までのテープとウォークマン、そして夢島の写真は、まとめて押入れの中にしまい込んだ。
後日。
谷田部とサクが、高校のグラウンドで会話している。
ちゃんと送ってあげられた? 廣瀬…
サクは小瓶に入った骨を見せる。
これがアキなんだって思うと、やっぱりできなくて。
でも、ずっと持ってようかなって。
忘れないように? 廣瀬といたことを。
(首を振って否定するサク)
アキが、死んだことを…。
先生、俺、医者になろうかなって。
え?
やっぱり、無理ですか?
そうじゃなくて、人を救う仕事でもあるけど、看取る場所でもあるんだよ。
結局、アキに何もできなかった気がするんです。
まぁ、まずは授業出なさいよ。
はい。
普段と変わらない、サクの日常がまた始まった。
ただ、アキだけがいなかった。
それからの僕は、何事もなく過ごしながら、勉強に没頭した。
もちろん、入試のためだったけど、難しいことを考えてるのはありがたかった。
その間、他のことを考えなくて済むから。
だけど…
朝、起きると泣いている。
悲しいからじゃない。
夢から現実に戻ってくる時、またぎ越さなくてはならない亀裂があり、
僕は涙を流さずに、そこを越えることができない。
時にはアキが、すぐ近くにいるような錯覚を覚えた。
でもそれは幻想に過ぎなかった。
何度も確かめて、それでもなお、ありもしない現実に期待する。
そんなことは、あるはずもないのに。
2004年。
それが、僕の17年だった。
バイク事故に遭った明希に付き添っていたサクだが、一時病院を抜け出し、道路に落としたアキの骨を確認しに行く。しかし雨で完全に流されてしまっていた。
病室に戻ったサクは雨に濡れていた。
どうしたの?
ちょっと降られて。
ちょっと?
落として、割れちゃって。ビン。
亜紀さんを?
でもさ、これで良かったのかなって。
撒いて欲しいって言われてたのに、俺が勝手に閉じ込めてきたようなものだし。
知ってると思うけど、一樹の父親って、最低でさ。
子どもができたって言っても、それは明希の人生だし、とか言うし。
女の問題も多い人で、ほんと、誠意のかけらもなくって。
なんでそんな人、好きになっちゃったんだろうって。
でもね、今になって思ってみると、すごく色んなものもらってるんだ。
彼が居なかったら、一樹はいなかったし。
一樹がいなければ、松本君とのこともなかったし。
一人で子どもを育てる自信とか、人の助けを素直にありがたいって思う気持ちとか。
変な言い方だけど、彼がいないことが、私を育ててくれたっていうか。
亜紀さんの骨が、松本君に頑張れって、言ってくれたんじゃないの?
松本君は、それに応え続けてきたんじゃないの?
すごいことだと思う。
そんな恋はきっと、二度とないよ。
かけがえのない17年を、こんな形で、終わりにしてもいいの?
明希にそう諭されたサクは、17年ぶりに廣瀬家を訪れる。
外観は17年前と何も変わらず、2階には亜紀の部屋も見えた。
門を前に躊躇していると、散歩から帰宅した真が後ろから声をかける。
まだ生きてたのか。
あ、あの、すみません。
あの…亜紀に、亜紀さんに謝らせてください。
昔も言ったと思うが、人に会ったら挨拶しなさい。
亜紀の部屋に通されたサク。
仏壇にはサクとの結婚写真などが今でも飾られていた。
17年前にできなかった焼香をするサク。
その後、防波堤で海を見ながら会話するサクと真。
真は包装紙に包まれた絵本をサクに差し出す。
持って行こうかとも思ったんだが、
顔ひとつ見せない人間に、わざわざお受け取り頂く義理もないかなと思ってね。
まだ一人らしいな。
はい。
お父さんお母さんが、心配してらしたぞ。
そろそろ、とは思ってます。
そうか…
はい。
もう忘れたか? 亜紀のことは。
どうなんでしょう。
失礼だぞ、相手の女性に。
きっと、これからだんだん忘れていくんでしょうね。
すいません。
寂しいんだろう。
俺もそうだ。
見たくないことまで夢に見ていたのに、見なくなってね。
そのうち、思い出すのにも時間がかかるようになって。
あの時はどうだったかって、女房に確かめるようになって。
でも、忘れたいのでも、忘れないのでもなくてね。
人間は、忘れていくんだよ。
生きていくために。
まぁそんなことは、お医者様に説教をしてもな。
よく頑張ったなぁ、サク。
生死を扱う仕事は、辛かっただろう?
もう、十分だ…ありがとう。
そう言って真が頭を下げると、サクは泣いてしまう。
骨を…少しだけ、もらってもいいですか。
俺はアキを、一度もちゃんと送ってないんです。
残っていた遺骨を分けてもらったサク。
遺骨をそばに置き、亜紀が残した絵本をはじめて手に取る。
ソラノウタ
生きていくあなたへ
もしもおまえが
枯れ葉ってなんの役に立つの?ってきいたなら
わたしは答えるだろう
病んだ土を肥やすんだと
おまえはきく
冬はなぜ必要なの?
するとわたしは答えるだろう
新しい葉を生み出すためさ
おまえはきく
葉っぱはなんであんなに緑なの?
そこでわたしは答える
なぜって、やつらは命の力にあふれているからだ
おまえはまたきく
夏が終わらなきゃいけないわけは?
わたしは答える
葉っぱどもが、みな死んでいけるようにさ
おまえは最後にきく
隣のあの子はどこに行ったの?
するとわたしは答えるだろう
もう見えないよ
なぜなら、おまえの中にいるからさ
おまえの脚は、あの子の脚だ
がんばれ
散骨場所を求め、高校のグラウンドに辿り着いたサク。
17年前、亜紀が陸上の練習で日々走っていた場所だ。
走りたいだろう、アキ。
100メートル走のスタートラインに立ったサクは、
ケースから骨を取り出し、手のひらに出す。
風が吹き、骨がグラウンドに放たれた。
それと同時に、サクは走り出す。17年前の亜紀のように。
走りながら、骨が撒かれていく。
追いつけない速度で去っていくアキを、
僕はもう、捕まえることができない。
生きている限り、君と僕とは遠くなるばかりだろう。
だけど、僕は走ることをやめない。
走り続ける僕たちの足跡は、
君がいた、証だから…
絵本の最後のページは「がんばれ」という言葉で締められていた。
その隣には、笛吹いてサクを励まそうとする、アキのイラストが描かれていた。
走り終わったその時に、
君に笑って会えるだろう――。
最終話「かたちあるもの」
2004年。
一樹を助けようとしてバイクにひかれ、緊急手術を受けた明希(桜井幸子)。
なんとか一命を取り留め、ベッドに横たわる明希に対し、サク(緒形直人)が声をかける。
ほんとにもう頼むよ、明希…
サクは「小林」ではなくはじめて「明希」と呼ぶ。
そして今ではアキ(亜紀)よりも、明希への想いが勝っていることを実感していた。
生きている者への想いは、死者への想いに勝っていくという、
その残酷な事実に、返せる言葉が僕にはもうない。
アキの死と過ごした17年が、終わっていく気がした。
きっと流れる血は、いつしか君の記憶さえ彼方へと運ぶのだろう。
僕はあと何度、君の名を呼ぶんだろう。
あと何度、あんな朝を迎えることができるのだろう。
与えられた未来と失われる過去の狭間で、君の名を呼ぶ。
アキ――
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1987年。
病院から抜け出しウルルの空を目指した二人だが、アキ(綾瀬はるか)は空港に着いたところで倒れてしまう。
だがサク(山田孝之)は引き返そうともせず、「約束を叶える」と取り憑かれたように言いながら、もう意識のないアキを背負って搭乗ゲートへ。
しかしすぐに係員に止められ、重体のアキは病院へと運ばれる。
その時アキのバッグと共に、包装紙に包まれた本のようなものが置き去りにされていた。
入院先へと連れ戻されたアキ。
病室前の廊下にいたサクは放心状態だった。
潤一郎が病院に駆けつけていた。
アキは…?
(潤一郎) まだ大丈夫だ。
そっか…。
と言ったところで、サクは極度の疲労から倒れてしまう…。
サクが倒れている間に、アキの最期の時は近づいていた。
母・綾子(手塚理美)は愛しそうにアキの手を握り、真は悔しそうにアキを見つめる。
もうなすすべはなかった。
アキは最後の声を振り絞る。
そ…ら…
ウルルに…撒いて…
わたし…
サ…ク…ちゃん……
長い夜が過ぎ、そして明けようとしていた。
サクは病院のベッドの上で目を覚ました。
看病していた母・富子に声をかける。
アキは?
(富子) 今朝ね…
何があったかを直感したサクは、点滴針を強引に引き抜いて起き上がる。
そして一直線にアキの病室へ。
だがすでにベッドは空だった。
やるせなさに襲われたサクは、思わず近くにあったマットレスや椅子を投げ飛ばす。
サクを追いかけてきた富子が慰める。
サク! やめなって。
安らかな最期だったって。
笑ってたって。
幸せそうだったって…
嘘だろ…
最後に、あんたの名前呼んだって…
嘘だ…こんなの、全部嘘だって言えよ!
その事実を認められないサクは、泣き崩れるしかなかった…。
後日。
退院したサクは家へと帰るが、心を閉ざし、両親とも言葉を交わさない。
一人で部屋に閉じこもるサク。
目を閉じると、アキがいた。
このまま、目が覚めなければいいと思った。
翌朝。
アキの葬儀がしめやかに執り行われていた。
担任の谷田部(松下由樹)をはじめとして、大木・智世・ボウズらも出席。
皆、目には涙を浮かべていた。
谷田部はサクを探すが見当たらない。
父・潤一郎に連れられ、気乗りしないまま葬儀場を訪れたサク。
だが入り口を前にしてたところで、やはりアキの死を受け入れることができず、走り去ってしまう。
一方、大木・智世・ボウズは、棺に収められたアキに献花し、最後のお別れをする。
ボウズはプレゼントするつもりで買った帽子を、
大木はブルーハーツのカセットテープを、
智世は陸上用のシューズを、
谷田部は陸上部で使っていたホイッスルを、それぞれ棺に添える。
「頑張ったね…廣瀬」と、谷田部はアキを慰めるように声をかける。
一方サクは雨が降りしきる中、防波堤へと向けて走っていた。
ただ、無我夢中で走ることしかできなかった。
途中で転んでしまい、すりむいた頬から赤い血が流れる。
心は死んでいても、自分は生きていることを実感する。
「なんで俺、生きてんだよ…」と嘆き、道路にあおむけになり、雨に打たれ続けるサク。
葬儀場。
最後に両親が献花をする。
綾子は「アキ!アキ…!」と嗚咽しながら、棺の中のアキに別れを告げる。
火葬場。
アキが灰になっていくのを寂しそうに見つめる大木たち。
そんな彼らに綾子が近づき、アキの遺品を手渡す。
ウルル出発前に録音されたカセットテープだった。
それぞれが一人になり、アキの最後のテープを聞く…
智世はかつて一緒に練習した、高校のグラウンドで…
智世へ。
智世とはじめてしゃべった日、今でも覚えてるよ。
陸上部の、練習の初日。
”タオル貸して”
屈託のない智世の明るさは、私の憧れだったんだよ。
智世の笑った顔、好き。
大きな声も好き。
だから…いつまでも、変わらないでね。
ボウズは悲しみを紛らわすように、たこ焼きを食べながら…
ボウズ。
一回、呼んでみたかったんだ。
怒るかもしれないけど、お坊さん、向いてると思うよ。
ボウズの明るいお経、いいなぁ。
聞いてみたいよ。
わらわは、バッチリ聞いておるぞよ。
大木は防波堤で、寂しそうに海を見つめながら…
大木くん、夢島、ありがとう。
私と大木くんは、ちょっと似てるかなって思ってます。
カッコつけなところとか。
実は、小心者のところとか。
もっと色んなこと話したかった。
もっと友達になれたよね、おまえさん。
サクちゃんを、よろしく。
谷田部は教室で、アキの席に座りながら…
先生、最後まで、ありがとうございました。
いつでも誰に対しても変わらない、先生の強さと優しさが、
こうでありたいと願う、私の理想でした。
恩師と呼べる人に出会えた私は、幸せでした。
それぞれが、アキの最後のメッセージに涙を流す…。
だが最後まで一緒にいるつもりだったアキは、サクへのテープは残していなかった。
真と綾子がアキの部屋で、遺品の整理をしていた。
するとアキのバッグと共に、包装紙に包まれた物体を見つける。
アキが病院に運ばれた時に、空港職員が見つけて確保されていたものだった。
真が包装紙を取ると、「ソラノウタ」という手作りの絵本だった。
サクの誕生日プレゼントのために、アキが病室で作ったのだ。
表紙はウルルの空だった。
真と綾子はアキの最後の願いを叶えるために、ウルルでの散骨を計画する。
一方、サクは今までのアキのテープの山と、夢島までの写真を前に、放心の日々だった。
心配したボウズがサクを呼び出し、大木・智世と共に防波堤に集まる。
(智世) アキ、サクには元気でいて欲しいって、思ってると思うんだ。
(大木) 気持ちわかるけどさ、焼香だけでもしに行こうよ。
アキちゃん、おまえさんに…
誰が言ったの。
誰かアキに会ったの。
(ボウズ) 会えるわけないだろ…
会えるわけないだろ!
おまえが一番よく知ってんだろ!
最後まで一緒にいた、おまえが! おまえが…!
寝てると会えるんだ、アキに。
夢見てる時は、これは夢だって思わないじゃん。
そのうち、目覚めなくなったりしてさ。
サクのすねた態度に、大木はたまらず殴りつける。
殴られ、倒れこむサク。
痛ぇだろ?
腹減るだろ? 寝るだろ? 起きるだろ? クソすんだろ? なぁ…。
廣瀬が一番欲しかったものは、おまえさんが持ってんだよ!
おい! おい…!
そう呼びかけるが、サクは心を閉ざしたままだった。
その夜。
アキの両親は散骨をするためにウルル行きを決める。
サクにも一緒に来て欲しいと、航空券がサクの家に届けられる。
(富子) アキちゃんの遺言でね、ウルルに、骨を撒いて欲しいって。
おまえも一緒にって、言ってくださってるんだよ。
もういい…
(潤一郎) 何を今さら傷ついたフリしてるんだ。
おまえが止め刺したようなもんじゃねぇか。
わかってたんだろ。あぁ、もう死ぬわって。
わかってて連れ出したんだろ。
やりたい放題やって、自分が一番かわいそうか?
悲劇のヒーローは、大威張りだな。
僕の気持ちなんか…
ほら、アキさんのためじゃなくて、自分のために泣いてるだけじゃないか。
サクはたまらず潤一郎に飛びかかる。取っ組み合いになる二人。
どうして送ってやることひとつできない?
どうして死んだ人間の頼みひとつ、聞いてやれないんだ!
情けねえなぁ…
その夜。
大木や潤一郎に叱咤され、サクの中で何かが変わろうとしていた。
サクは「世界で一番青い空が見たい」という、アキの最後の願いが録音されたテープを聞く。そして、ウルル行きを決意…。
オーストラリア。ウルル。
赤い大地に降り立ったサク・真・綾子の三人。
真はアボリジニの特殊な埋葬について語り始める。
アボリジニは、遺体を二回埋葬するらしい。
最初は土に埋葬して、その後で骨だけを取り出して。
その骨のすべてを木の皮にくるむ。
肉も骨もすべて、大地に戻すためらしい。
大地に戻った人間は、新たな命を育む。
アボリジニにとって、生と死は一体なんだ。
そう語り合いながら、世界の中心に辿り着いた三人。
これはアキの願いなんだ。一緒にやろう。サク君も。
木箱に入った遺骨を取り出し、三人で分ける。
手のひらには粉になった遺骨があった。
そして真と綾子の手から、風に乗って遺骨が放たれる。
赤い大地へと旅立ったアキ…。
花を…咲かせるかしら。
土に還って…
あの子は…命を捨てて……
感極まって嗚咽する綾子。
真がそれを支える。
まだ撒くことができないサクに配慮し、「下で待ってる」と言い残して立ち去る二人。
なぜだか、世界が色を失っていた。
あんなに青かった空も、赤かった土も。
そんな世界の中で、きっと骨だけは白く、変わらない真実だった。
アキとの幸せな日々を、サクは改めて回想する。
そして今、手の中にはそのアキが…。
温度のない、重さもない、吹けば飛ぶような白い粉。
それがアキだった…
サクの哀しみは頂点に達する。
「アキーーッ!」と、ウルルの空に絶叫…。
僕の、好きな人だった――
帰国後。
結局、サクは撒くことができなかった。
アキの骨は小瓶に入れ、持ち歩くことにした。
だが今までのテープとウォークマン、そして夢島の写真は、まとめて押入れの中にしまい込んだ。
後日。
谷田部とサクが、高校のグラウンドで会話している。
ちゃんと送ってあげられた? 廣瀬…
サクは小瓶に入った骨を見せる。
これがアキなんだって思うと、やっぱりできなくて。
でも、ずっと持ってようかなって。
忘れないように? 廣瀬といたことを。
(首を振って否定するサク)
アキが、死んだことを…。
先生、俺、医者になろうかなって。
え?
やっぱり、無理ですか?
そうじゃなくて、人を救う仕事でもあるけど、看取る場所でもあるんだよ。
結局、アキに何もできなかった気がするんです。
まぁ、まずは授業出なさいよ。
はい。
普段と変わらない、サクの日常がまた始まった。
ただ、アキだけがいなかった。
それからの僕は、何事もなく過ごしながら、勉強に没頭した。
もちろん、入試のためだったけど、難しいことを考えてるのはありがたかった。
その間、他のことを考えなくて済むから。
だけど…
朝、起きると泣いている。
悲しいからじゃない。
夢から現実に戻ってくる時、またぎ越さなくてはならない亀裂があり、
僕は涙を流さずに、そこを越えることができない。
時にはアキが、すぐ近くにいるような錯覚を覚えた。
でもそれは幻想に過ぎなかった。
何度も確かめて、それでもなお、ありもしない現実に期待する。
そんなことは、あるはずもないのに。
2004年。
それが、僕の17年だった。
バイク事故に遭った明希に付き添っていたサクだが、一時病院を抜け出し、道路に落としたアキの骨を確認しに行く。しかし雨で完全に流されてしまっていた。
病室に戻ったサクは雨に濡れていた。
どうしたの?
ちょっと降られて。
ちょっと?
落として、割れちゃって。ビン。
亜紀さんを?
でもさ、これで良かったのかなって。
撒いて欲しいって言われてたのに、俺が勝手に閉じ込めてきたようなものだし。
知ってると思うけど、一樹の父親って、最低でさ。
子どもができたって言っても、それは明希の人生だし、とか言うし。
女の問題も多い人で、ほんと、誠意のかけらもなくって。
なんでそんな人、好きになっちゃったんだろうって。
でもね、今になって思ってみると、すごく色んなものもらってるんだ。
彼が居なかったら、一樹はいなかったし。
一樹がいなければ、松本君とのこともなかったし。
一人で子どもを育てる自信とか、人の助けを素直にありがたいって思う気持ちとか。
変な言い方だけど、彼がいないことが、私を育ててくれたっていうか。
亜紀さんの骨が、松本君に頑張れって、言ってくれたんじゃないの?
松本君は、それに応え続けてきたんじゃないの?
すごいことだと思う。
そんな恋はきっと、二度とないよ。
かけがえのない17年を、こんな形で、終わりにしてもいいの?
明希にそう諭されたサクは、17年ぶりに廣瀬家を訪れる。
外観は17年前と何も変わらず、2階には亜紀の部屋も見えた。
門を前に躊躇していると、散歩から帰宅した真が後ろから声をかける。
まだ生きてたのか。
あ、あの、すみません。
あの…亜紀に、亜紀さんに謝らせてください。
昔も言ったと思うが、人に会ったら挨拶しなさい。
亜紀の部屋に通されたサク。
仏壇にはサクとの結婚写真などが今でも飾られていた。
17年前にできなかった焼香をするサク。
その後、防波堤で海を見ながら会話するサクと真。
真は包装紙に包まれた絵本をサクに差し出す。
持って行こうかとも思ったんだが、
顔ひとつ見せない人間に、わざわざお受け取り頂く義理もないかなと思ってね。
まだ一人らしいな。
はい。
お父さんお母さんが、心配してらしたぞ。
そろそろ、とは思ってます。
そうか…
はい。
もう忘れたか? 亜紀のことは。
どうなんでしょう。
失礼だぞ、相手の女性に。
きっと、これからだんだん忘れていくんでしょうね。
すいません。
寂しいんだろう。
俺もそうだ。
見たくないことまで夢に見ていたのに、見なくなってね。
そのうち、思い出すのにも時間がかかるようになって。
あの時はどうだったかって、女房に確かめるようになって。
でも、忘れたいのでも、忘れないのでもなくてね。
人間は、忘れていくんだよ。
生きていくために。
まぁそんなことは、お医者様に説教をしてもな。
よく頑張ったなぁ、サク。
生死を扱う仕事は、辛かっただろう?
もう、十分だ…ありがとう。
そう言って真が頭を下げると、サクは泣いてしまう。
骨を…少しだけ、もらってもいいですか。
俺はアキを、一度もちゃんと送ってないんです。
残っていた遺骨を分けてもらったサク。
遺骨をそばに置き、亜紀が残した絵本をはじめて手に取る。
ソラノウタ
生きていくあなたへ
もしもおまえが
枯れ葉ってなんの役に立つの?ってきいたなら
わたしは答えるだろう
病んだ土を肥やすんだと
おまえはきく
冬はなぜ必要なの?
するとわたしは答えるだろう
新しい葉を生み出すためさ
おまえはきく
葉っぱはなんであんなに緑なの?
そこでわたしは答える
なぜって、やつらは命の力にあふれているからだ
おまえはまたきく
夏が終わらなきゃいけないわけは?
わたしは答える
葉っぱどもが、みな死んでいけるようにさ
おまえは最後にきく
隣のあの子はどこに行ったの?
するとわたしは答えるだろう
もう見えないよ
なぜなら、おまえの中にいるからさ
おまえの脚は、あの子の脚だ
がんばれ
散骨場所を求め、高校のグラウンドに辿り着いたサク。
17年前、亜紀が陸上の練習で日々走っていた場所だ。
走りたいだろう、アキ。
100メートル走のスタートラインに立ったサクは、
ケースから骨を取り出し、手のひらに出す。
風が吹き、骨がグラウンドに放たれた。
それと同時に、サクは走り出す。17年前の亜紀のように。
走りながら、骨が撒かれていく。
追いつけない速度で去っていくアキを、
僕はもう、捕まえることができない。
生きている限り、君と僕とは遠くなるばかりだろう。
だけど、僕は走ることをやめない。
走り続ける僕たちの足跡は、
君がいた、証だから…
絵本の最後のページは「がんばれ」という言葉で締められていた。
その隣には、笛吹いてサクを励まそうとする、アキのイラストが描かれていた。
走り終わったその時に、
君に笑って会えるだろう――。
世界の中心で愛を叫ぶ 第10話
2004年9月3日放映
第10話「たすけてください…」
2004年。
バイクにひかれそうになった一樹を助けるため、道路に飛び出したサク(緒形直人)と明希(桜井幸子)。
その瞬間、サクはアキの遺骨が入った小瓶を落とし、割ってしまう。
サクがそれに気をとられている間、一樹を助けようとした明希が、代わりにバイクにひかれてしまう。
すぐに病院へと運ばれ、緊急手術を受ける明希。
サクと一樹は手術室の前で祈るしかなかった。
助けてください…
この世界でたった一人、僕を追いかけてくれる人を
僕のために笑ってくれる人を
僕のために泣いてくれる人を
僕を…抱きしめてくれる人を
助けてください…
僕たちを、助けてください。
僕は祈っていた、あの日と同じように。
祈ることしかできなかった…。
サクは17年前にも同じ言葉を発し、祈ったことがあった…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1987年。
「世界で一番青い空が見たい」という、アキの最後の願いが録音されたテープを、繰り返し聞くサク(山田孝之)。
サクはオーストラリア行きを本気で考えるようになる。
アキ(綾瀬はるか)は死を覚悟の上で、それでも最後にウルルに行きたいと言う。
アキは…生きること、諦めたの?
死ぬってことが、否定できなくなった時、
死に方に夢を持つことは、諦めることなの?
最後まで生きようと思うことなの?
わかんないな、俺…
私も。
いっか、そんなこと。
ウルルに新婚旅行か…
ウルル行きを決めた二人。
そしてそれは限りなく死を意味する…。サクは一人でむせび泣く。
サクが旅行代理店に問い合わせると、オーストラリアへの旅費は40万円かかると言われてしまう。
旅立ちの前にみんなに会いたいと望んだアキの元に、大木・智世・ボウズが見舞いに訪れる。
アキがニット帽を脱ぎ、スキンヘッドになった姿を見せると、智世は泣いてしまう。
それでも友人との幸せなひと時を過ごす…。
高額の旅費を何とかしようと思ったサク。
タンスの中の通帳へと手を伸ばすが、母に見つかりとがめられる。
どうしても使い道は言い出せなかった。
ある日、担任の谷田部(松下由樹)がアキのお見舞いに訪れる。
先生、わがまま言っても…
何?
授業して欲しいんです。
もう、教室行けないかもしれないから…。
何言ってんの。
そう言いながらも、谷田部は古文の教科書を開いて読み始める…。
一方、サクはアキとのオーストラリア行きに戸惑いを感じ始める。
大木や智世らはアキを元気づけるために、帽子のプレゼントを計画。
またアキの母・綾子からは親族にも配りたいと、結婚写真の焼き増しを頼まれる。
サク以外にも、アキを大切に思う人はたくさんいる…。
アキ、ホントにこれでいいのかな。
会いたい人、いっぱいいるんじゃないの。
アキに会いたい人も、いっぱいいてさ。
みんな1日でも長く、アキの顔見ていたくて…
だけど…もう時間ないじゃない…。
どうしていいのかわからないサクは、谷田部に相談。
アキはウルルに行きたいって言うけど、ほんとにそれが一番いいのか。
なんかもうわかんなくなって…。
アキを大切に思ってる人、いっぱいいるわけで。
迷うくらいなら、やめといた方がいいと思うよ。
もしものことがあったら、あんたのせいだって言う人もいるかもしれない。
あんた自身も、そう思ってしまうと思う。違うかな。
谷田部は定期的にアキを見舞いに訪れていた。
授業のことなんだけどさ、どうせなら廣瀬が興味持てることやろうと思って。
今一番知りたいことって、何?
私、何のために死ぬんでしょうか…。
それは…残された人、一人一人が決めることなんじゃないかな。
その生き様を見て。
廣瀬亜紀は、どんな風に生きてきた?
アキは自分らしい生き方について考え始める。
一方、サクはウルル行きをどうすべきなのか、わからないままだった。
仏壇の前で祖父に問いかけるが、返事はない。
するとサクの父・潤一郎がやってきて、一通の通帳をサクに手渡す。
祖父がサクの名義で貯金してきた通帳で、160万円ほど貯まっていた。
お祖父ちゃんと相談して使いなさい、と潤一郎。
旅費の都合がついたサクは旅行代理店へ。オーストラリア行きのチケットを2人分購入する。 10月24日、サクの誕生日が搭乗日だった。
覚悟の変わらないアキは、皆と会えなくなっても後悔しないと言う。
この日、アキの両親は調理した料理を病室に持ち込み、ベッドのアキを囲んで食事。
最後の家族団らんのひと時を過ごす…。
私って、どんな子だった?
頑固で負けず嫌い。
ま、カッコつけの泣き虫だな。
産声がすごく大きくて、男の子ですかって。
ハイハイも歩き出すのも、すごく早くて。
両親がいない間に、サクはアキの家に忍び込み、旅行に必要なアキの衣類などを用意する。
ふと、奇妙な感覚に襲われた。
何もかもがアキを物語る部屋の中で、アキだけがいなかった。
もしかして、これは僕の未来なのだろうか。
何も変わらない、アキだけがそこからすっぽりと抜け落ちた世界。
アキの死と共にやってくる世界。
誰かの痛みも、受けるかもしれない非難も。
一人で死を看取る恐怖も。
すべてを越えて…ただもう、二人で空が見たいと思った。
サクもようやく覚悟が決まる。
旅立ちの日。
サクは置手紙を残して家を抜け出そうとするが、母・富子に見つかる。
「変なことすんじゃないよ」と、お守りを2つ手渡す富子…。
サクが病室に行くと、すでにアキは準備ができていた。
病院を抜け出し、表でタクシーを捕まえる。
立っていることもままならないアキが後部座席に乗り込んだところで、
アキはサクをなぜか突き放し、運転手に発進してと告げる。
アキを乗せたタクシーは、サクを追いて行ってしまう。
一方、娘が抜け出したことを知ったアキの両親は愕然。
アキの主治医は自殺行為だと嘆く。
そしてベッドの上にはいくつかのテープが残されていた。
真は両親宛てのテープを再生する…。
お父さん、お母さん、ごめんね。
これが自殺なのか何なのか、わかりません。
だけど、頑固で、負けず嫌いで、カッコつけで、泣き虫の、私の最後のわがまま。
白血病で死ぬことが私の運命だったとしても、
そんなものに、私の17年をつぶされたくない。
きっと生きたいように生きるために、生まれてきたから…。
最後までそうしたい。
青い空を見に行く。
わがままで、ごめんなさい。
アキは一人で駅に辿り着き、階段を這いつくばりながら登っていた。
追いかけてきたサクが、息を切らしながらアキを見つける。
なんかあったらどうすんだよ。
だって…これ以上迷惑かけられないよ。
私、死んだらどうするの?
かついで戻ってくるよ。
重いかも…
いいよ。
アキは、そのまんまでいいんだよ。
二人は電車で空港へ。
思い出していた。
アキの誕生日、7月2日。
俺が生まれてきたのは、アキのいる世界だったんだって。
待ってたの。
私はずっとサクのいない世界で、サクが生まれるのを、私は待ってたのよ。
アキは…たった3ヶ月とちょっとじゃない、一人だったの。
それって、ズルくない?
俺、これからずっとだよ…。
足速いんだもん、私…。
どこ行くんだよ、そんなに走って。
あの世なんてないって言ってたじゃない。
天国…。
逃げんなよ…。
空港に着いた時は雨が降っていた。
サクはアキをロビーの椅子に座らせ、搭乗手続きへと向かう。
手続きが終わって戻る時、アキが椅子から床へと崩れ落ちてしまう。
アキは意識がもうろうとしていた。
アキ、大丈夫?
戻ろう
いいから…
でも…
行きたいの
アキはサクに支えられながら搭乗ゲートへと向かう。
だがもう歩くこともできず、また倒れこんでしまう。
アキ、アキ…
サクちゃん…
やっぱり、あの世なんてない
天国なんて、ない…
もう、しゃべるな…
ここ、天国だもん…
好きよ、サクちゃん……
アキはついに意識を失ってしまう…。
――僕が生きてきた中で、アキがいなかった日はなかった
アキを抱きかかえたサクは、絶望の中でつぶやく。
助けて…ください…
助けてください…
助けてください…
周囲の人々に対してではなく、巨きな存在に向かって、サクはそう訴え続けた。
第10話「たすけてください…」
2004年。
バイクにひかれそうになった一樹を助けるため、道路に飛び出したサク(緒形直人)と明希(桜井幸子)。
その瞬間、サクはアキの遺骨が入った小瓶を落とし、割ってしまう。
サクがそれに気をとられている間、一樹を助けようとした明希が、代わりにバイクにひかれてしまう。
すぐに病院へと運ばれ、緊急手術を受ける明希。
サクと一樹は手術室の前で祈るしかなかった。
助けてください…
この世界でたった一人、僕を追いかけてくれる人を
僕のために笑ってくれる人を
僕のために泣いてくれる人を
僕を…抱きしめてくれる人を
助けてください…
僕たちを、助けてください。
僕は祈っていた、あの日と同じように。
祈ることしかできなかった…。
サクは17年前にも同じ言葉を発し、祈ったことがあった…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1987年。
「世界で一番青い空が見たい」という、アキの最後の願いが録音されたテープを、繰り返し聞くサク(山田孝之)。
サクはオーストラリア行きを本気で考えるようになる。
アキ(綾瀬はるか)は死を覚悟の上で、それでも最後にウルルに行きたいと言う。
アキは…生きること、諦めたの?
死ぬってことが、否定できなくなった時、
死に方に夢を持つことは、諦めることなの?
最後まで生きようと思うことなの?
わかんないな、俺…
私も。
いっか、そんなこと。
ウルルに新婚旅行か…
ウルル行きを決めた二人。
そしてそれは限りなく死を意味する…。サクは一人でむせび泣く。
サクが旅行代理店に問い合わせると、オーストラリアへの旅費は40万円かかると言われてしまう。
旅立ちの前にみんなに会いたいと望んだアキの元に、大木・智世・ボウズが見舞いに訪れる。
アキがニット帽を脱ぎ、スキンヘッドになった姿を見せると、智世は泣いてしまう。
それでも友人との幸せなひと時を過ごす…。
高額の旅費を何とかしようと思ったサク。
タンスの中の通帳へと手を伸ばすが、母に見つかりとがめられる。
どうしても使い道は言い出せなかった。
ある日、担任の谷田部(松下由樹)がアキのお見舞いに訪れる。
先生、わがまま言っても…
何?
授業して欲しいんです。
もう、教室行けないかもしれないから…。
何言ってんの。
そう言いながらも、谷田部は古文の教科書を開いて読み始める…。
一方、サクはアキとのオーストラリア行きに戸惑いを感じ始める。
大木や智世らはアキを元気づけるために、帽子のプレゼントを計画。
またアキの母・綾子からは親族にも配りたいと、結婚写真の焼き増しを頼まれる。
サク以外にも、アキを大切に思う人はたくさんいる…。
アキ、ホントにこれでいいのかな。
会いたい人、いっぱいいるんじゃないの。
アキに会いたい人も、いっぱいいてさ。
みんな1日でも長く、アキの顔見ていたくて…
だけど…もう時間ないじゃない…。
どうしていいのかわからないサクは、谷田部に相談。
アキはウルルに行きたいって言うけど、ほんとにそれが一番いいのか。
なんかもうわかんなくなって…。
アキを大切に思ってる人、いっぱいいるわけで。
迷うくらいなら、やめといた方がいいと思うよ。
もしものことがあったら、あんたのせいだって言う人もいるかもしれない。
あんた自身も、そう思ってしまうと思う。違うかな。
谷田部は定期的にアキを見舞いに訪れていた。
授業のことなんだけどさ、どうせなら廣瀬が興味持てることやろうと思って。
今一番知りたいことって、何?
私、何のために死ぬんでしょうか…。
それは…残された人、一人一人が決めることなんじゃないかな。
その生き様を見て。
廣瀬亜紀は、どんな風に生きてきた?
アキは自分らしい生き方について考え始める。
一方、サクはウルル行きをどうすべきなのか、わからないままだった。
仏壇の前で祖父に問いかけるが、返事はない。
するとサクの父・潤一郎がやってきて、一通の通帳をサクに手渡す。
祖父がサクの名義で貯金してきた通帳で、160万円ほど貯まっていた。
お祖父ちゃんと相談して使いなさい、と潤一郎。
旅費の都合がついたサクは旅行代理店へ。オーストラリア行きのチケットを2人分購入する。 10月24日、サクの誕生日が搭乗日だった。
覚悟の変わらないアキは、皆と会えなくなっても後悔しないと言う。
この日、アキの両親は調理した料理を病室に持ち込み、ベッドのアキを囲んで食事。
最後の家族団らんのひと時を過ごす…。
私って、どんな子だった?
頑固で負けず嫌い。
ま、カッコつけの泣き虫だな。
産声がすごく大きくて、男の子ですかって。
ハイハイも歩き出すのも、すごく早くて。
両親がいない間に、サクはアキの家に忍び込み、旅行に必要なアキの衣類などを用意する。
ふと、奇妙な感覚に襲われた。
何もかもがアキを物語る部屋の中で、アキだけがいなかった。
もしかして、これは僕の未来なのだろうか。
何も変わらない、アキだけがそこからすっぽりと抜け落ちた世界。
アキの死と共にやってくる世界。
誰かの痛みも、受けるかもしれない非難も。
一人で死を看取る恐怖も。
すべてを越えて…ただもう、二人で空が見たいと思った。
サクもようやく覚悟が決まる。
旅立ちの日。
サクは置手紙を残して家を抜け出そうとするが、母・富子に見つかる。
「変なことすんじゃないよ」と、お守りを2つ手渡す富子…。
サクが病室に行くと、すでにアキは準備ができていた。
病院を抜け出し、表でタクシーを捕まえる。
立っていることもままならないアキが後部座席に乗り込んだところで、
アキはサクをなぜか突き放し、運転手に発進してと告げる。
アキを乗せたタクシーは、サクを追いて行ってしまう。
一方、娘が抜け出したことを知ったアキの両親は愕然。
アキの主治医は自殺行為だと嘆く。
そしてベッドの上にはいくつかのテープが残されていた。
真は両親宛てのテープを再生する…。
お父さん、お母さん、ごめんね。
これが自殺なのか何なのか、わかりません。
だけど、頑固で、負けず嫌いで、カッコつけで、泣き虫の、私の最後のわがまま。
白血病で死ぬことが私の運命だったとしても、
そんなものに、私の17年をつぶされたくない。
きっと生きたいように生きるために、生まれてきたから…。
最後までそうしたい。
青い空を見に行く。
わがままで、ごめんなさい。
アキは一人で駅に辿り着き、階段を這いつくばりながら登っていた。
追いかけてきたサクが、息を切らしながらアキを見つける。
なんかあったらどうすんだよ。
だって…これ以上迷惑かけられないよ。
私、死んだらどうするの?
かついで戻ってくるよ。
重いかも…
いいよ。
アキは、そのまんまでいいんだよ。
二人は電車で空港へ。
思い出していた。
アキの誕生日、7月2日。
俺が生まれてきたのは、アキのいる世界だったんだって。
待ってたの。
私はずっとサクのいない世界で、サクが生まれるのを、私は待ってたのよ。
アキは…たった3ヶ月とちょっとじゃない、一人だったの。
それって、ズルくない?
俺、これからずっとだよ…。
足速いんだもん、私…。
どこ行くんだよ、そんなに走って。
あの世なんてないって言ってたじゃない。
天国…。
逃げんなよ…。
空港に着いた時は雨が降っていた。
サクはアキをロビーの椅子に座らせ、搭乗手続きへと向かう。
手続きが終わって戻る時、アキが椅子から床へと崩れ落ちてしまう。
アキは意識がもうろうとしていた。
アキ、大丈夫?
戻ろう
いいから…
でも…
行きたいの
アキはサクに支えられながら搭乗ゲートへと向かう。
だがもう歩くこともできず、また倒れこんでしまう。
アキ、アキ…
サクちゃん…
やっぱり、あの世なんてない
天国なんて、ない…
もう、しゃべるな…
ここ、天国だもん…
好きよ、サクちゃん……
アキはついに意識を失ってしまう…。
――僕が生きてきた中で、アキがいなかった日はなかった
アキを抱きかかえたサクは、絶望の中でつぶやく。
助けて…ください…
助けてください…
助けてください…
周囲の人々に対してではなく、巨きな存在に向かって、サクはそう訴え続けた。
世界の中心で愛を叫ぶ 第9話
2004年8月27日放映
第9話「最期の選択」
2004年。
写真を撮るため写真館を訪れたサク(緒形直人)たち。
そこで明希(桜井幸子)は、壁にかかっていた17年前の結婚写真を見つける。
そこには幸せそうなサクとアキが写っていた。
幸せな思い出にはならず、なぜ17年も引きずっているのか疑問に思った明希は、二人の別れについて尋ねることに…。
僕は話し始めた。
アキと僕の最期の日々について。
幸せな日々の終焉。
暖かな世界の崩壊。
むせ返るような死の匂い。
僕たちの、僕の、最期の選択…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1987年。
婚姻届を片手にアキにプロポーズしたサク(山田孝之)。
早速用紙に記入するが、男は18歳にならなければ結婚できないと、アキ(綾瀬はるか)に指摘される。
それでもサクは適当にごまかして申請しようとするが…。
アキの主治医は、抗がん剤がうまく効いていないと両親に説明。より強い薬に切り替える必要があった。
それが効かない時は覚悟して欲しいと両親に告げる…。
サクは婚姻届の保証人の記入を、担任の谷田部(松下由樹)に頼むが、私文書偽造と言われてしまい、正式な婚姻は諦めることに。
それでも二人の結婚写真だけでも撮りたいと、サクはアキに提案。
病状が悪化しつつあるアキだが、それでもサクは前向きだった。
なんか、サクちゃん変わったね。
もうさ、先のこと考えるのやめたんだ。
どうしても、俺もアキもよくないことばかり考える。
でも結局、人生って毎日の積み重ねだしさ。
だったら今二人にできることを、思いっきりやろうって思ってさ。
一方、娘がもう長くはないことを覚悟した真(三浦友和)は、今までのアキへの厳しい態度を改める。
亜紀があのくらいの頃、ひらひらのワンピースみたいなやつ、買ってくれってダダこねたことがあったろ。
こんなのどうするんだって言って、その代わりに「ぐりとぐら」買ってやったんだよな。
間違ってなかったと思うけど。
亜紀ちゃんの夢は、絵本の編集者になることなんだから。
両方買ってやれば良かった。
もっと甘やかしてやれば良かった…。
そして、サクの父・潤一郎に、形だけの結婚写真を撮影して欲しいと頼むことに。
ものすごく身勝手なお願いだということは、わかっています。
うちの娘は、もう長くはないかもしれません。
もしも、私が朔太郎君の親だったら、そんな写真は撮るなと言います。
残された時に、つらくなる事の方が多い気がします。
そうですかね。
きっと、こんな風に幸せになりたいって、思うんじゃないですかね。
人間は、欲の深い生き物ですから。
潤一郎はそう答え、結婚写真の撮影を快諾。
結婚写真用のウェディングドレスは、アキの母が貸してくれることに。
結婚式が現実のものとなり、喜ぶサクとアキはビニール越しにキスを…。
結婚式前夜。
アキは病室に真を呼び、メッセージを録音したウォークマンを手渡す。
聞いてみると、アキの声が…。
お父さん。明日私、結婚写真撮るよ。
私のウェディングドレスとか、興味ないかもしれないけど、
私、頑張ってしゃんとするから。
髪の毛にも、踏ん張るように指令出したぞよ。
今の私には、もうこんなことしか頑張れないけど、お父さんに見て欲しい。
娘の儚い幸せに真は涙を流す…。
結婚式当日。
写真館で皆を待っていたサクは、椅子でうたたねをしていた。
僕は夢を見ていた。
夢の中では、アキはピンピンしていて。
代わりに、僕が病気になっていた。
だけど夢を見ながら、頭の隅でこれは夢だと分かっていて。
だけど…だから、目覚めたくない夢で。
僕は、いつまでもこのまま…
「サクちゃん」という声がして起きると、そこには純白のウェディングドレス姿のアキが…。
サクは幸せのあまり涙が溢れる。
両家の両親や、大木・智世・ボウズらも写真館に集まった。
いよいよ、二人の結婚写真が撮影された。
次に、家族や友人を含めた集合写真が撮られた。皆、笑顔だった。
(モノローグ)
みんながいて、アキがいて、僕は幸せで…。
まるで、夢の中のように幸せで。
写真館の表に出たアキは、青空を見上げていた。
病室からは見れない、久しぶりの青空。それがアキの心を潤す…。
結婚式以来、アキのために空の写真を撮り始めたサク。
現像した写真を届けに行くと、アキの容態は悪化し、また面会謝絶になっていた。
綾子は代わりに録音したテープとウォークマンを手渡す。
サクちゃん、いつも空の写真、ありがとう。
今度の薬はキツいけど、これだけキツいんだから、効いてるはず。
ここで頑張れば、絶対、悪い細胞をやっつけられる。
だから心配しないでね、サクちゃん。
(モノローグ)
それからの僕は、テープでしかアキの声を聞くことができなくなった。
ある日のアキのテープの声。
サクちゃん、いつも空の写真、ありがとう。
毎日、朝も、昼も、夜も。
ちゃんと学校は行ってる?
私は最近、やっとアボリジニの本を読み終えました。
アボリジニの世界では、この世にあるすべてのものに、理由が存在するの。
災害や、争いや、死。
私たちの世界では、マイナスと考えられることにも。
私の病気にも理由があるはずよ。
それを悲しいとか、苦しいとか、寂しいとか思うのは、きっと、理解が足りないせいなんだよね。
そうだよね、サクちゃん…。
サクちゃん…。
生きてるって、どういうことかな。
死ぬって、どういうことかな。
たまに、生きてるのか死んでるのか、わからなくなる。
サクちゃん。サクちゃん…。
私の声、聞こえてるよね……。
明らかにアキの容態は悪化していた。
心配したサクは、面会謝絶もかまわずアキの病室へ。
綾子の了解を得て久しぶりに病室に通されると、そこには副作用でスキンへッドになってしまったアキが、悲しそうな笑顔を浮かべていた。
面倒くさいから、剃っちゃった…。
びっくりした?
すごい…すごいびっくりした。
なんで、泣くの?
アキが…泣かないからだよ。
サクちゃん、キスでも…キスでもしませんか?
二人は泣きながら、ビニール越しにキスを…。
そしてアキからテープが手渡される。
病院を出たサクと真の会話。
アキは、もうダメなんですか。
体力の限界でね。
明日から当分、投与は見合わせるそうだ。
そのあとは…。
特効薬ができるかもしれないし。
そうですね…。
真はすでに、覚悟を決めた様子だった…。
お見舞いの帰り道。
サクが自転車に乗りながらテープを聞いている。
それはアキの最後の願いだった。
サクちゃん、昨日、夢を見たよ。
電話が鳴っていて、そっちの方に、歩いていくと…
真っ青な、空があるの。
あれはきっと、ウルルの空だよ。
サクちゃん…空が見たい。
一度しかない、最後なら…。
私…世界で一番、青い空が見たい。
絶望感に襲われたサクは、自転車から転げ落ち、アスファルトに横たわる。
何を希望と言うのだろう。
何を絶望と呼ぶのだろう。
何を生きると言うのだろう。
何を死ぬと言うのだろう。
何を正気と、何を狂気と言うのか。
もう何も、僕には何もわからなくなった。
だけどアキが望むなら、僕は空を見せてやろう。
アキを眠らせてやろう。
世界で一番、青い空を見せて…
2004年。
世界で一番、幸せに眠らせてやろう。
そう思ったんだ…。
そう明希に語り終えたサク。
俺は、アキが死ぬと知っていて、連れ出したんだ。
もしあのまま病院にいたら、アキはもう1年は、生き延びたかもしれない。
4年、5年生き延びれば、骨髄移植を受けられたかもしれない。
そんな未来も、あったかもしれない…。
…もう、聞かないね。
だけど、松本君が話したくなったら、私いくらでも聞くからね。
(モノローグ)
僕の心が軽くなった分は、きっとこの小さな肩に乗っている。
僕はこんな優しさを知らなかった。
失いたくないと、大切にしなければいけないと思った…。
明希と一樹は先に東京に帰ることになった。
サクはフェリー乗り場まで見送る。
サクも早く東京に戻ってきて欲しいと、一樹は寂しそうに言う。
二人と別れ、家へと帰るサク。ある覚悟を決めていた。
僕はアキを、撒かなければいけないと思った。
それは忘れるためではなく…
その時、「サク! やっぱり一緒に…」という声と共に、一樹が道路を横切って走ってくる。
そこに、一台のバイクが…。
一樹を助けようとサクと明希は道路に飛び出すが、
その瞬間、アキの骨が入った小瓶が落ち、割れて骨が飛び出してしまう…。
第9話「最期の選択」
2004年。
写真を撮るため写真館を訪れたサク(緒形直人)たち。
そこで明希(桜井幸子)は、壁にかかっていた17年前の結婚写真を見つける。
そこには幸せそうなサクとアキが写っていた。
幸せな思い出にはならず、なぜ17年も引きずっているのか疑問に思った明希は、二人の別れについて尋ねることに…。
僕は話し始めた。
アキと僕の最期の日々について。
幸せな日々の終焉。
暖かな世界の崩壊。
むせ返るような死の匂い。
僕たちの、僕の、最期の選択…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1987年。
婚姻届を片手にアキにプロポーズしたサク(山田孝之)。
早速用紙に記入するが、男は18歳にならなければ結婚できないと、アキ(綾瀬はるか)に指摘される。
それでもサクは適当にごまかして申請しようとするが…。
アキの主治医は、抗がん剤がうまく効いていないと両親に説明。より強い薬に切り替える必要があった。
それが効かない時は覚悟して欲しいと両親に告げる…。
サクは婚姻届の保証人の記入を、担任の谷田部(松下由樹)に頼むが、私文書偽造と言われてしまい、正式な婚姻は諦めることに。
それでも二人の結婚写真だけでも撮りたいと、サクはアキに提案。
病状が悪化しつつあるアキだが、それでもサクは前向きだった。
なんか、サクちゃん変わったね。
もうさ、先のこと考えるのやめたんだ。
どうしても、俺もアキもよくないことばかり考える。
でも結局、人生って毎日の積み重ねだしさ。
だったら今二人にできることを、思いっきりやろうって思ってさ。
一方、娘がもう長くはないことを覚悟した真(三浦友和)は、今までのアキへの厳しい態度を改める。
亜紀があのくらいの頃、ひらひらのワンピースみたいなやつ、買ってくれってダダこねたことがあったろ。
こんなのどうするんだって言って、その代わりに「ぐりとぐら」買ってやったんだよな。
間違ってなかったと思うけど。
亜紀ちゃんの夢は、絵本の編集者になることなんだから。
両方買ってやれば良かった。
もっと甘やかしてやれば良かった…。
そして、サクの父・潤一郎に、形だけの結婚写真を撮影して欲しいと頼むことに。
ものすごく身勝手なお願いだということは、わかっています。
うちの娘は、もう長くはないかもしれません。
もしも、私が朔太郎君の親だったら、そんな写真は撮るなと言います。
残された時に、つらくなる事の方が多い気がします。
そうですかね。
きっと、こんな風に幸せになりたいって、思うんじゃないですかね。
人間は、欲の深い生き物ですから。
潤一郎はそう答え、結婚写真の撮影を快諾。
結婚写真用のウェディングドレスは、アキの母が貸してくれることに。
結婚式が現実のものとなり、喜ぶサクとアキはビニール越しにキスを…。
結婚式前夜。
アキは病室に真を呼び、メッセージを録音したウォークマンを手渡す。
聞いてみると、アキの声が…。
お父さん。明日私、結婚写真撮るよ。
私のウェディングドレスとか、興味ないかもしれないけど、
私、頑張ってしゃんとするから。
髪の毛にも、踏ん張るように指令出したぞよ。
今の私には、もうこんなことしか頑張れないけど、お父さんに見て欲しい。
娘の儚い幸せに真は涙を流す…。
結婚式当日。
写真館で皆を待っていたサクは、椅子でうたたねをしていた。
僕は夢を見ていた。
夢の中では、アキはピンピンしていて。
代わりに、僕が病気になっていた。
だけど夢を見ながら、頭の隅でこれは夢だと分かっていて。
だけど…だから、目覚めたくない夢で。
僕は、いつまでもこのまま…
「サクちゃん」という声がして起きると、そこには純白のウェディングドレス姿のアキが…。
サクは幸せのあまり涙が溢れる。
両家の両親や、大木・智世・ボウズらも写真館に集まった。
いよいよ、二人の結婚写真が撮影された。
次に、家族や友人を含めた集合写真が撮られた。皆、笑顔だった。
(モノローグ)
みんながいて、アキがいて、僕は幸せで…。
まるで、夢の中のように幸せで。
写真館の表に出たアキは、青空を見上げていた。
病室からは見れない、久しぶりの青空。それがアキの心を潤す…。
結婚式以来、アキのために空の写真を撮り始めたサク。
現像した写真を届けに行くと、アキの容態は悪化し、また面会謝絶になっていた。
綾子は代わりに録音したテープとウォークマンを手渡す。
サクちゃん、いつも空の写真、ありがとう。
今度の薬はキツいけど、これだけキツいんだから、効いてるはず。
ここで頑張れば、絶対、悪い細胞をやっつけられる。
だから心配しないでね、サクちゃん。
(モノローグ)
それからの僕は、テープでしかアキの声を聞くことができなくなった。
ある日のアキのテープの声。
サクちゃん、いつも空の写真、ありがとう。
毎日、朝も、昼も、夜も。
ちゃんと学校は行ってる?
私は最近、やっとアボリジニの本を読み終えました。
アボリジニの世界では、この世にあるすべてのものに、理由が存在するの。
災害や、争いや、死。
私たちの世界では、マイナスと考えられることにも。
私の病気にも理由があるはずよ。
それを悲しいとか、苦しいとか、寂しいとか思うのは、きっと、理解が足りないせいなんだよね。
そうだよね、サクちゃん…。
サクちゃん…。
生きてるって、どういうことかな。
死ぬって、どういうことかな。
たまに、生きてるのか死んでるのか、わからなくなる。
サクちゃん。サクちゃん…。
私の声、聞こえてるよね……。
明らかにアキの容態は悪化していた。
心配したサクは、面会謝絶もかまわずアキの病室へ。
綾子の了解を得て久しぶりに病室に通されると、そこには副作用でスキンへッドになってしまったアキが、悲しそうな笑顔を浮かべていた。
面倒くさいから、剃っちゃった…。
びっくりした?
すごい…すごいびっくりした。
なんで、泣くの?
アキが…泣かないからだよ。
サクちゃん、キスでも…キスでもしませんか?
二人は泣きながら、ビニール越しにキスを…。
そしてアキからテープが手渡される。
病院を出たサクと真の会話。
アキは、もうダメなんですか。
体力の限界でね。
明日から当分、投与は見合わせるそうだ。
そのあとは…。
特効薬ができるかもしれないし。
そうですね…。
真はすでに、覚悟を決めた様子だった…。
お見舞いの帰り道。
サクが自転車に乗りながらテープを聞いている。
それはアキの最後の願いだった。
サクちゃん、昨日、夢を見たよ。
電話が鳴っていて、そっちの方に、歩いていくと…
真っ青な、空があるの。
あれはきっと、ウルルの空だよ。
サクちゃん…空が見たい。
一度しかない、最後なら…。
私…世界で一番、青い空が見たい。
絶望感に襲われたサクは、自転車から転げ落ち、アスファルトに横たわる。
何を希望と言うのだろう。
何を絶望と呼ぶのだろう。
何を生きると言うのだろう。
何を死ぬと言うのだろう。
何を正気と、何を狂気と言うのか。
もう何も、僕には何もわからなくなった。
だけどアキが望むなら、僕は空を見せてやろう。
アキを眠らせてやろう。
世界で一番、青い空を見せて…
2004年。
世界で一番、幸せに眠らせてやろう。
そう思ったんだ…。
そう明希に語り終えたサク。
俺は、アキが死ぬと知っていて、連れ出したんだ。
もしあのまま病院にいたら、アキはもう1年は、生き延びたかもしれない。
4年、5年生き延びれば、骨髄移植を受けられたかもしれない。
そんな未来も、あったかもしれない…。
…もう、聞かないね。
だけど、松本君が話したくなったら、私いくらでも聞くからね。
(モノローグ)
僕の心が軽くなった分は、きっとこの小さな肩に乗っている。
僕はこんな優しさを知らなかった。
失いたくないと、大切にしなければいけないと思った…。
明希と一樹は先に東京に帰ることになった。
サクはフェリー乗り場まで見送る。
サクも早く東京に戻ってきて欲しいと、一樹は寂しそうに言う。
二人と別れ、家へと帰るサク。ある覚悟を決めていた。
僕はアキを、撒かなければいけないと思った。
それは忘れるためではなく…
その時、「サク! やっぱり一緒に…」という声と共に、一樹が道路を横切って走ってくる。
そこに、一台のバイクが…。
一樹を助けようとサクと明希は道路に飛び出すが、
その瞬間、アキの骨が入った小瓶が落ち、割れて骨が飛び出してしまう…。
世界の中心で愛を叫ぶ 第8話
2004年8月20日放映
第8話「プロポーズ」
2004年。
サクに会いに一人で故郷までやって来た一樹。
一樹を追って駆けつけた明希(桜井幸子)に、サク(緒形直人)はある告白をする。
実は、死のうとしてさ。
でも全然ダメで、溺れただけ。
馬鹿すぎ。
俺もそう思う。
だけどさ、俺は本当は生きたいんだなって。
生きたいんだなって、やっとわかったよ。
ねえ、もし亜紀さんの存在がなかったら、松本君は一樹を産めって言った?
そういう形で、亜紀さんは、松本君の中で生きてるんじゃないのかな。
忘れるとか、忘れないとかじゃなくて。
もう、ずーっといる…。
夏にしては、穏やかな朝だった。
走り出すこともなく、けれど、留まることもなく。
時はゆるやかに流れていくのだろうと
ふと、そんなことを思った…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1987年。
サク(山田孝之)は連日お見舞いに通う日々。
今日はアキの父・真(三浦友和)も、アボリジニの本を差し入れに見舞いに来ていた。
帰りに病院のロビーで言葉を交わすサクと真。
たまたま通りかかったアキ(綾瀬はるか)が、二人の会話を聞いてしまう。
君は大学は、どうするんだ?
治療は何年かかるかわからないんだぞ。
君の人生っていうのもあるだろう。
あの…僕の祖父の恋人は、結核だったんですけど。
頑張って生き延びてたら、ある日、特効薬ができて治って。
そういうことだってあると思うし…。
そう願いたいね。
(モノローグ)
そうは言っても、僕はアキのお父さんの言葉を気にしていた。
あと何日、あと何年、あと何十年…。
何本テープが溜まるまで…。
でも、とにかく生き延びればいいのだ。その日まで。
オーストラリアへの修学旅行が1週間後に迫っていた。
旅行中にアキに何かあったら困ると、サクは参加を辞退するつもりでいた。
放課後。見舞いに訪れたサクに、オーストラリアの先住民・アボリジニにとっての世界の中心はウルルという聖地であると、アキが語る。
弔辞で読んだ詩がアボリジニのものであると真島に教えてもらって以来、アキはアボリジニの世界観に興味を持ち、何冊か本を読んでいた。
いつか二人でウルルに行ってみたいと話すアキ。そしてその時のために修学旅行で下見をして、写真を撮ってきて、とサクに言う。自分を気にせず楽しんで来て欲しいという、アキなりの心遣いだった。
サクは亜紀が心配だったが、気をつかい過ぎるのもよくないと、オーストラリアへと旅立つ。
だがその直後、亜紀の容態が悪化してしまう。
オーストラリアに到着したサクは、滞在先のホテルで急に「帰る」と言い出す。
大木らは呆れたようにそれを止めるが、「今日死ぬかもしれないんだ」とサクは本気。
そして亜紀が白血病であることを、大木・智世・中川に初めて告白する。
再びクリーンユニットに戻された亜紀。
抗がん剤の影響で、髪の毛がごっそりと抜け始めてしまう…。
担任の谷田部に「ちゃんと連絡は取ってるから」と慰められたサクは、
翌日から皆とオペラハウスなどを観光するが、アキのことがずっと気にかかっていた。
そしてアボリジニの聖地・ウルルを訪れたサク。
世界のへそは、空に近かった。
結局、写真は1枚しか撮らなかった。
いつか、アキと一緒に来るのだから。
アキがその目で見ればいいと、
僕は自分に言い聞かせていた。
帰国したサクは病院へと直行する。
だがアキは再び面会謝絶の状態で、会うことができない。
代わりにアキの母・綾子(手塚理美)から録音したテープを手渡されたサク。
聞いてみるとアキの声が…。
サクちゃん。
私、最近サクちゃんといると、すごく疲れるんだ。
病人扱いされるのも、治るとか信じられるのも、うっとうしいし。
だから、もう来ないでください。
さようなら、サクちゃん。
意外にもそれは、一方的に別れを告げる内容だった…。
動揺したサクは、夜中に再び病院を訪れるが、アキはすでに眠っていた。
付き添いをしていた綾子は、サクに病状を説明する。
アキ今ね、毎日お風呂に入ることもできなければ、髪を洗うこともできないの。
24時間、点滴を打ち続けて、抗がん剤で髪の毛は抜けてきてるし。
食べ物だってよく吐いてしまうし。
そんな生活がいつまで続くかわからない。
それが亜紀の現実なのよ。
見なかったことにしてあげて。
…何かあった?
テープにもう、来るなと入ってて…。
すみません、取り乱して…。
それで…それから?
俺といると疲れるとか…。
うん。
鬱陶しいとか…。
うん。
(モノローグ)
アキのお母さんの「うん」が、アキにとても似ていて。
僕はもう駄目だった。
僕はもう、何がなんだかわからなくなっていた。
何に泣いているのかわからなかった。
ただ現実の前で、僕のやっていることは、あまりにも浅はかで。
アキに見せようとしたウルルの空の写真。
生まれてからこんなに、恥ずかしいと思ったことはなかった。
飛べない鳥に空を見せ、何を希望と言うのだろう。
自分の無力さを痛感したサクは、アキのためにできることを真剣に考え始める。
翌日の病室。綾子がアキの髪を洗っている。
お母さん、私ね、サクにもう来ないでって言ったんだ。
サクのためを思ったら、そうするべきだよね。
手間ばっかりかかるけど、お母さんは付き合ってね。
サクはこれからどんどん色んな世界に行って、ちゃんと出会いもあって。
その時、私の方がいいよって言えるもの、何ひとつないと思うんだ。
髪の毛なくて、一人で髪も洗えなくて、お金ばかりかかって、性格もひがみっぽくて。
きっと、子どもとかも無理っぽいよね。
そんな女、選ぶ理由、何もないよね…。
生きてたら、それって遠くないよね。
でも、それくらいは生きてそうな気がするよね。
お母さんはいてね。
お母さんだから…いてね…。
ずっといてね……。
アキはサクにもう何もしてあげられないと、自分から身を引いたのだ…。
授業に出ず図書室にこもっていたサクを、谷田部が見つける。
先生、俺、何かアキにできることって…。
わからないな。
廣瀬が松本に求めてるものなんて、あなたたちにしか。
一方、アキが白血病であることを知った大木・智世・中川は、そろって神社でお百度参りをし、アキの回復を祈っていた。
放課後。サクが埠頭でたたずんでいると、大木が声をかける。
なあ、俺だって、お前だって、明日死ぬかもしれないって思わない?
みんな同じだよ。
明日死ぬとしたら、おまえさんは何がしたい?
「私1回も好きって言われてない」というアキの言葉が頭をよぎる。
サクはある決意を固め、アキの病室へ。
アキは「帰って」と突き放すが、サクはテープを聞いて欲しいと手渡す。
テープにはサクの声が…。
こんばんは、松本朔太郎です。
今日は俺の嫌いなものについて話します。
第5位。図書室でキスされるような、男にガードがゆるい廣瀬アキ。
第4位。俺の前で無理をして、俺を特別扱いしない廣瀬アキ。
第3位。夜の海で死のうとする廣瀬アキ。
第2位。テープ1本で別れようとする、ふざけた廣瀬アキ。
第1位。後ろに乗ると言ったくせに、約束を破る廣瀬アキ。
以上…のみ。
あとは好き。全部好き…。
テープを聞き終えたアキが、近くにいたサクに泣きながら声をかける。
サクちゃん…。
私、もうサクちゃんにあげられるもの、何もないよ。
私といても、いいことなんてないよ。
もう何もないけど、ほんとにそれでもいいのかな…。
サクは婚姻届けを取り出してアキに手渡す。
じゃあ、結婚して。
ここに名前書いて…。
俺を、幸せにして…。
アキはクリーンユニットから出てきて、サクとキスを…。
僕たちは失い続けた。
分かち合える未来も、描ける夢も、当たり前だと思っていた幸せも。
もう、何ひとつ残されていなかった。
たったひとつを除いては。
廣瀬アキが好きです。
とても、とても…
2004年。
好きでした。
写真館を訪れたサク・明希・一樹。
サクは二人の写真を撮ろうとするが、やっぱり自分も入っていいかなと言い、自分も写真に納まる。
それは家族写真のようでもあった。
あの頃のような、張り裂けそうな想いじゃない。
だけどあの頃のように、僕は二人を幸せにしたいと、
幸せにしてもらいたいと、そう思ったんだ。
そう思ったんだよ、アキ…。
明日には失う未来とは、何ひとつ気づかずに…。
第8話「プロポーズ」
2004年。
サクに会いに一人で故郷までやって来た一樹。
一樹を追って駆けつけた明希(桜井幸子)に、サク(緒形直人)はある告白をする。
実は、死のうとしてさ。
でも全然ダメで、溺れただけ。
馬鹿すぎ。
俺もそう思う。
だけどさ、俺は本当は生きたいんだなって。
生きたいんだなって、やっとわかったよ。
ねえ、もし亜紀さんの存在がなかったら、松本君は一樹を産めって言った?
そういう形で、亜紀さんは、松本君の中で生きてるんじゃないのかな。
忘れるとか、忘れないとかじゃなくて。
もう、ずーっといる…。
夏にしては、穏やかな朝だった。
走り出すこともなく、けれど、留まることもなく。
時はゆるやかに流れていくのだろうと
ふと、そんなことを思った…。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
1987年。
サク(山田孝之)は連日お見舞いに通う日々。
今日はアキの父・真(三浦友和)も、アボリジニの本を差し入れに見舞いに来ていた。
帰りに病院のロビーで言葉を交わすサクと真。
たまたま通りかかったアキ(綾瀬はるか)が、二人の会話を聞いてしまう。
君は大学は、どうするんだ?
治療は何年かかるかわからないんだぞ。
君の人生っていうのもあるだろう。
あの…僕の祖父の恋人は、結核だったんですけど。
頑張って生き延びてたら、ある日、特効薬ができて治って。
そういうことだってあると思うし…。
そう願いたいね。
(モノローグ)
そうは言っても、僕はアキのお父さんの言葉を気にしていた。
あと何日、あと何年、あと何十年…。
何本テープが溜まるまで…。
でも、とにかく生き延びればいいのだ。その日まで。
オーストラリアへの修学旅行が1週間後に迫っていた。
旅行中にアキに何かあったら困ると、サクは参加を辞退するつもりでいた。
放課後。見舞いに訪れたサクに、オーストラリアの先住民・アボリジニにとっての世界の中心はウルルという聖地であると、アキが語る。
弔辞で読んだ詩がアボリジニのものであると真島に教えてもらって以来、アキはアボリジニの世界観に興味を持ち、何冊か本を読んでいた。
いつか二人でウルルに行ってみたいと話すアキ。そしてその時のために修学旅行で下見をして、写真を撮ってきて、とサクに言う。自分を気にせず楽しんで来て欲しいという、アキなりの心遣いだった。
サクは亜紀が心配だったが、気をつかい過ぎるのもよくないと、オーストラリアへと旅立つ。
だがその直後、亜紀の容態が悪化してしまう。
オーストラリアに到着したサクは、滞在先のホテルで急に「帰る」と言い出す。
大木らは呆れたようにそれを止めるが、「今日死ぬかもしれないんだ」とサクは本気。
そして亜紀が白血病であることを、大木・智世・中川に初めて告白する。
再びクリーンユニットに戻された亜紀。
抗がん剤の影響で、髪の毛がごっそりと抜け始めてしまう…。
担任の谷田部に「ちゃんと連絡は取ってるから」と慰められたサクは、
翌日から皆とオペラハウスなどを観光するが、アキのことがずっと気にかかっていた。
そしてアボリジニの聖地・ウルルを訪れたサク。
世界のへそは、空に近かった。
結局、写真は1枚しか撮らなかった。
いつか、アキと一緒に来るのだから。
アキがその目で見ればいいと、
僕は自分に言い聞かせていた。
帰国したサクは病院へと直行する。
だがアキは再び面会謝絶の状態で、会うことができない。
代わりにアキの母・綾子(手塚理美)から録音したテープを手渡されたサク。
聞いてみるとアキの声が…。
サクちゃん。
私、最近サクちゃんといると、すごく疲れるんだ。
病人扱いされるのも、治るとか信じられるのも、うっとうしいし。
だから、もう来ないでください。
さようなら、サクちゃん。
意外にもそれは、一方的に別れを告げる内容だった…。
動揺したサクは、夜中に再び病院を訪れるが、アキはすでに眠っていた。
付き添いをしていた綾子は、サクに病状を説明する。
アキ今ね、毎日お風呂に入ることもできなければ、髪を洗うこともできないの。
24時間、点滴を打ち続けて、抗がん剤で髪の毛は抜けてきてるし。
食べ物だってよく吐いてしまうし。
そんな生活がいつまで続くかわからない。
それが亜紀の現実なのよ。
見なかったことにしてあげて。
…何かあった?
テープにもう、来るなと入ってて…。
すみません、取り乱して…。
それで…それから?
俺といると疲れるとか…。
うん。
鬱陶しいとか…。
うん。
(モノローグ)
アキのお母さんの「うん」が、アキにとても似ていて。
僕はもう駄目だった。
僕はもう、何がなんだかわからなくなっていた。
何に泣いているのかわからなかった。
ただ現実の前で、僕のやっていることは、あまりにも浅はかで。
アキに見せようとしたウルルの空の写真。
生まれてからこんなに、恥ずかしいと思ったことはなかった。
飛べない鳥に空を見せ、何を希望と言うのだろう。
自分の無力さを痛感したサクは、アキのためにできることを真剣に考え始める。
翌日の病室。綾子がアキの髪を洗っている。
お母さん、私ね、サクにもう来ないでって言ったんだ。
サクのためを思ったら、そうするべきだよね。
手間ばっかりかかるけど、お母さんは付き合ってね。
サクはこれからどんどん色んな世界に行って、ちゃんと出会いもあって。
その時、私の方がいいよって言えるもの、何ひとつないと思うんだ。
髪の毛なくて、一人で髪も洗えなくて、お金ばかりかかって、性格もひがみっぽくて。
きっと、子どもとかも無理っぽいよね。
そんな女、選ぶ理由、何もないよね…。
生きてたら、それって遠くないよね。
でも、それくらいは生きてそうな気がするよね。
お母さんはいてね。
お母さんだから…いてね…。
ずっといてね……。
アキはサクにもう何もしてあげられないと、自分から身を引いたのだ…。
授業に出ず図書室にこもっていたサクを、谷田部が見つける。
先生、俺、何かアキにできることって…。
わからないな。
廣瀬が松本に求めてるものなんて、あなたたちにしか。
一方、アキが白血病であることを知った大木・智世・中川は、そろって神社でお百度参りをし、アキの回復を祈っていた。
放課後。サクが埠頭でたたずんでいると、大木が声をかける。
なあ、俺だって、お前だって、明日死ぬかもしれないって思わない?
みんな同じだよ。
明日死ぬとしたら、おまえさんは何がしたい?
「私1回も好きって言われてない」というアキの言葉が頭をよぎる。
サクはある決意を固め、アキの病室へ。
アキは「帰って」と突き放すが、サクはテープを聞いて欲しいと手渡す。
テープにはサクの声が…。
こんばんは、松本朔太郎です。
今日は俺の嫌いなものについて話します。
第5位。図書室でキスされるような、男にガードがゆるい廣瀬アキ。
第4位。俺の前で無理をして、俺を特別扱いしない廣瀬アキ。
第3位。夜の海で死のうとする廣瀬アキ。
第2位。テープ1本で別れようとする、ふざけた廣瀬アキ。
第1位。後ろに乗ると言ったくせに、約束を破る廣瀬アキ。
以上…のみ。
あとは好き。全部好き…。
テープを聞き終えたアキが、近くにいたサクに泣きながら声をかける。
サクちゃん…。
私、もうサクちゃんにあげられるもの、何もないよ。
私といても、いいことなんてないよ。
もう何もないけど、ほんとにそれでもいいのかな…。
サクは婚姻届けを取り出してアキに手渡す。
じゃあ、結婚して。
ここに名前書いて…。
俺を、幸せにして…。
アキはクリーンユニットから出てきて、サクとキスを…。
僕たちは失い続けた。
分かち合える未来も、描ける夢も、当たり前だと思っていた幸せも。
もう、何ひとつ残されていなかった。
たったひとつを除いては。
廣瀬アキが好きです。
とても、とても…
2004年。
好きでした。
写真館を訪れたサク・明希・一樹。
サクは二人の写真を撮ろうとするが、やっぱり自分も入っていいかなと言い、自分も写真に納まる。
それは家族写真のようでもあった。
あの頃のような、張り裂けそうな想いじゃない。
だけどあの頃のように、僕は二人を幸せにしたいと、
幸せにしてもらいたいと、そう思ったんだ。
そう思ったんだよ、アキ…。
明日には失う未来とは、何ひとつ気づかずに…。
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