2002年2月14日 放送
木村は香織との恋の悩みから、仕事でミスが多くなってしまう。そんな様子を見て、吉武は木村が転職活動をしているのではないか、と疑う。籐子が木村に直接尋ねると、恋に悩んでいるせいということで誤解は解ける。
広小路製薬の仕事も大詰めを迎えるが、セレモニーで配るフェンネル(ハーブの一種)の種が届かず、木村は自分の考えた企画ということと、邪魔をしたくないということから、春菜とデートしている貫井には知らせず、籐子と2人でフェンネルを用意しようとする。フェンネルが届いていないことを貫井が知り、フェンネルにこだわる木村と木村を応援する籐子、代替品を用意しようとする貫井が対立する。セレモニーの時間が迫り・・・
満足できる私生活は仕事の動機づけ要因になりえるが、反面、不満足な私生活が仕事への集中を妨げ、モラルダウンを招くことがある。優秀なビジネスマンは、私生活のストレスを仕事へあまり影響させない、自律能力がある。しかし、木村は若く、純粋ゆえにそうした自律能力がまだ低いのであろう。こうした部下を持った上司は、部下の私生活の問題を解決するのは難しいであろうから、籐子のように部下の話に耳を傾けることが大切である。不満というのは口にするだけで、軽減されるからである。
仕事へのこだわりや理想を大切にすべきであるが、フェンネルを使用することがクライアントの満足へどの程度貢献するかということと、ビジネス上の費用やリスクとの比較で判断すべきである。cに詳細に記述したが、経営者としては代用品の使用を含めた対応策を取っていくことを選択すべきであり、木村には貫井企画の経営の視点で再考してもらえるよう、促す必要があろう。
貫井の経営者としての役割から、仕事の質、リスク管理、クライアントとの関係管理、部下との関係という4つの視点で考えてみたい。 貫井が独立した理由として、自分が楽しめる仕事がしたい、ということをあげていた。今回、籐子が代用品を探すと言った貫井へ反論したとき、貫井の考えを根拠にしていたがそれは適切でないと考える。広告制作が趣味ではなく、顧客から対価を得るビジネスであるのならば、まず、顧客を満足させる仕事が優先され、その過程や結果を働いている人間が楽しめる状態にすべきである。貫井は当初、そうした考えから代用品を探し始めたが、最後は籐子の言葉に洗脳されたかのように、クライアントへ逆切れした。クライアントにしてみれば、セレモニーがナチュラルアップの宣伝効果があれば良いので、風船につけるノベルティ(景品)がフェンネルであろうと油取り紙であろうとあまり関係ない。セレモニーに参加している人たちも、風船につけられているノベルティにこだわる人はいないであろう。フェンネルが貫井企画の仕事の質を大きく左右しない状況である。それを貫井たちの価値観と自己満足を押し付けるような形で、強引にフェンネルを使うようにさせ、セレモニーの失敗のリスクを高めさせ、クライアントを不安にさせた。仕事の質を評価し、対価を支払うのはクライアントなのであるから、自己満足と木村への信頼をフェンネルへこだわることで示そうとした貫井の判断は適切とはいえない。
リスク管理に関しては、フェンネルという珍しい種を使うことに決めた時点で、入手できなかったときの代用品を木村と打ち合わせておくべきであろう。もし、木村がフェンネルにこだわるのであれば、複数の業者から種を調達するなど、リスクの分散を図っておく。木村たちがフェンネルの種を入手できるかどうかがわからないのに、木村たちを信じ、会社の命運を賭けるという、経営上のリスクを増大させる経営姿勢は社長として失格である。例えば、木村たちを信じて貫井がフェンネルで行くと意思決定しても、届かない可能性は否定できないわけだから、広小路製薬の社員には油取り紙を風船に取り付けることを依頼しておいても良かった。
クライアントの管理に関しては、クライアントの意向に逆らい、しかも逆切れしたことは社会人として失格。貫井企画のミスで、広小路製薬宣伝部を混乱させ、余計な仕事までさせた責任をまったく反省していない。もし、フェンネルで行きたいのであれば、風船を飛ばせないという最悪のケースを防ぐ手立てをして、フェンネルの種が間に合えば、そちらを使うという説得をすべきである。木村の個人的思い入れを受け入れてフェンネルを待ったことで、木村の貫井に対する信頼は増した。また、木村や籐子はこの一件の対応で成長しただろう。しかし、会社が存続してこそ、社員との関係である。木村たちにはフェンネルを探させ、種を入手できて時間的に間に合えばファンネルを使う。ダメなら油取り紙を代用する、という妥協案を示し、指示するほうがよかった。
自分たちの意見がクライアントに受け入れられないからといって、怒鳴って言いなりにさせようとするのはビジネスマンとして失格である。さて、こういう状況で、自分たちの意見を通したいのであれば、セレモニーに間に合わないかもしれないというクライアントの不安を解消しながら、自分たちの計画を受け入れさせることが重要である。すなわち、cに記述したように、風船を余分に準備し、油取り紙を風船につける。フェンネルが到着した時点で、時間的に可能であれば、風船にフェンネルをつける。間に合うかどうかわからないフェンネルに賭けるようなリスクを、クライアントにも負わせるやり方は通用しない。ドラマゆえにハッピーエンドとなったが、万が一失敗していたら、広小路製薬の失態としてだけでなく、貫井企画をコンペへ強引に押し込んだ宣伝部長(春菜の父)の社内での立場を悪くし、宣伝課長も責任を取らされる。貫井企画は広小路製薬にイベント費用を支払うことで、資金繰りができず倒産の可能性も出てくる。貫井や木村が今後、広告業界で仕事をしようと思っても、クライアントの意向に沿わずセレモニーを失敗させた男として悪評が立つ。そうした最悪のシナリオを創造できる能力が貫井にあれば、もっと慎重な意思決定をしたであろう。
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